2024.2.8
レジェンドによる警鐘
2024.2.8
レジェンドによる警鐘
(クラブの原点)
先週末、ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーのセレクションが開催されたそうです*1。昨年も2月に行われました。今年と同様、その際にジャンボ尾崎プロがメディアの取材に応じた記事が沢山あります。ちょうど1年前にリアルタイムで記事を読んでいて、ハッとさせられたものがありました。なんと、ジュニアゴルファーの親についてジャンボ尾崎プロが言及されておられる。具体的にいうと、2つの「親の責任」について。頭が痛くなります。
1つめは、身体づくり。ゴルフに特化することの弊害。
「きょうの子たちにも、ゴルフ歴10年、幼稚園のころからやっているとかいる。ゴルフだけをやってるんじゃ、なかなか体が大きくならない。そういう意味で一番最初に教える親の責任も大きい」*2
続いて2つめは、道具選び。目先の結果を求めるが故に生じる弊害。
「今は親の期待も大きいんだ。特に女子の世界は。そういった意味では、親が一番最初に教えることに責任が出てくる。早くうまくなって欲しいと思って、小さい子供に父親のクラブを振らせたりしたら、スイングも崩れる」*3
「幼稚園」との言葉も前後にありますので、「小さい子供」は幼稚園児や小学生をイメージされておられ、「父親のクラブ」は大人用をカットしたクラブを意味している可能性が高いと思います。子供、じゃなくて、“小さい”子供ですから。さすがに父親のクラブをカットせずにそのまま持たせる方は少ないと思われます。一方で、セレクションの対象が中学3年生からですので、中高生で大人のクラブを使う弊害を指摘されておられるとも読み取れます。ただ、中高生ともなると大人のクラブを使うのが一般的ですし、加えて「親が一番最初に」とありまして、中高生でゴルフを始めてセレクションを受けるレベルに達する人もいるとは思うのですが、参加された方々は幼稚園児や小学低学年生からゴルフを始められている。ですので、前者の解釈(「小さい子供」=幼稚園児、小学生とりわけ低学年)が正しいと私は思っていて、そうなるとスイングづくりに適したクラブを、本人に合ったクラブを、という当たり前の結論に表面上はなるわけです。フィッティングの重要性を改めて感じます。それはそうなのですが、ジャンボ尾崎プロのこの短いご発言にはさらに深い意味が込められている感じがします*3。
超オーバースペックでない前提で(オーバースペックやアンダースペックという概念でゴルフの世界においてどこまで現実を捉えきれるのかは別として)、大人のクラブの方が性能的にはおそらく良いですから、多少無理しても(筋トレも兼ねて? 重いクラブに慣れて? 後者については松山英樹プロが暗示的に弊害を示唆)、ある程度本人に合わせればもちろん飛ぶし、まとまりやすい。ただ「スイングも崩れる」。ジャンボ尾崎プロは前置きとして「早くうまくなって欲しいと思って…」と述べておられる。長期的な視点に立つと、低年齢ジュニアにとって結果が出るクラブが良いとは限らない。「スイング “も” 崩れる」可能性もあるから。これ以上は論理が飛躍して私の単なる感想文になってしまうので注釈で*4。
上からA,B,Cとジュニアゴルファーのレベルを並べると、セレクションに来る子のなかにはAもいるけれど多くはBの上(じょう)ぐらいだとジャンボ尾崎プロはおっしゃっておられます*5。セレクションを受ける機会を与えられたレベルのジュニアですら、潜在的な身体能力、スイングのレベルがジャンボ尾崎プロが要求する水準に達していない。なぜそうなるのか。そのひとつが「親の責任」ということになる。上を目指す子どもをサポートするのであれば、まずは親として真っ先にこの2つに対応しなくてはと思います。
*1 公式ウェブサイト; ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーセレクション SUPPORTED BY ISPS HANDA. 今年のセレクションを取り上げた記事は、香川友さんのプロデビューに関連付けたものが多い印象です。例えばこちら。高木彩音, 「史上最年少プロ転向の15歳が“軍団入り”か?ジャンボも熱視線「あれ中学生か?」 , ALBA.Net.GOLF, 2024.2.5. ジャンボ尾崎プロの目にもとまったそうです。凄いです。「15歳の男子ゴルファー香川友が尾崎将司のジャンボアカデミー入り 5日に合格通知受ける」, 『スポーツ報知』,2024.2.5.
*2 清野邦彦, 「「努力次第で化けてくることを願う」 ジャンボ尾崎がセレクション公開」, ゴルフダイジェスト・オンライン, 2022.2.13. 同記事でジャンボ尾崎プロは、素振りの必要性を強調されておられます。小学生で重いバットを振れとはおっしゃっておりません。怪我します、のちのち。プロ野球選手の坂本勇人さんですら本格的には高校生から素振り。
*3 間宮輝憲, 「なぜジャンボ尾崎はトップ選手を輩出し続けられるのか? 育成哲学に感じた一貫性「富士山に登るのは一番最後なんだ」, ALBA.Net.GOLF, 2022.2.14. 別の記事では直接引用の形でこの2つの点について親の責任として説明されていたことがわかります。「小さい頃からゴルフばかりやって、なかなか体が大きくならない。小さい頃にお父さんのクラブを振ってたら、スイングが崩れていく。親の責任は大きい(吉良幸雄, 「「親の責任は大きい」 ジャンボ尾崎のジュニア教育論」, 日本経済新聞オンライン, 2022.2.23 (会員限定記事).」。昨年のセレクションの際に行われたジャンボ尾崎プロのインタビューはこちらから。一部ですが。「【貴重】ジャンボ尾崎プロメディアインタビュー公開 ジュニアゴルファーへの想い!!」, 公式YouTube; ジャンガーゴルフchannel jumger, 2022.2.13.
*4 ゴルフを始めたのが遅くても飛躍できる要因というか、ゴルフを遅く始めた方が飛躍できる要因、幼少期にゴルフを始めたのに大きくなってから伸びない背景のひとつがここにあるような気がしてなりません。怪我の予防という観点からも。プロを目指すのであれば、3,4歳頃からゴルフに取り組んで悪い癖がつくよりも、丸山茂樹プロのように、9.10歳ぐらいから本格的に球を打った方が良いのかもしれない。海外も含めて、小学4,5年生からゴルフを始めて飛躍しているジュニアやプロはスイングに悪い癖がついていない印象があります。低学年生に比べて無理が少ないから。かつて私は自分が使用するタイトリストのヘッドで息子用のウッドとアイアンをつくり一時ゴルフをさせた時期がありました。最初は、打てるし飛ぶしスコアは出るし、父としては「うちの子は大人のヘッドも使えるぜ」「身体も強いし」なんて思っていたところ、徐々にスイングが崩れていく息子の姿。見て見ないふりもできたわけで、「これはスイングの乱れではない。慣れてくるはずさ」と。確かにだいぶ慣れもしました。パッと見はスイングが良い。スイングスピードも徐々に出てくるように。フェアウェイウッドも上がるように。アイアンも打ち込めるように。要するに、慣れ。先ほど本文で引用した松山英樹プロの話ですね。おそらく松山英樹プロは警鐘を鳴らしておられるわけですが。慣れ、そして癖がつく。良い癖ならいいですけど。ボールの飛びざまだけを見ていたら(トラックマンとGC4を使い何度も数字で確認しました)、息子に合っているクラブだとフィッティングされるでしょう。一度使ってしまうとジュニアクラブに戻るのは勇気がいるのです、子供本人も親も。おそらく幼稚園生、小学生(低学年?)に限られた話ですけども。そもそもジャンボ尾崎プロご自身が大人になられてからゴルフをされたからこそ、その弊害により気づかれているような気が。気とか感じとかで申し訳ございません。レジェンドのこの言葉に昨年触れ、息子が2,3歳ぐらいの時には、丸山茂樹プロや松山英樹プロ、石川遼プロ、その他多くのプロ中のプロのご発言、そして名フィッター、USKIDSやFLYNNの開発担当者、タイトリストのツアー担当者から直接お話しを聞いて同じような警鐘に私は触れたのにもかかわらず、5, 6歳の息子に「父親のクラブ」を持たせてしまったわけです。こう書いている今も、打感が良く手に感触が伝わるアイアン、飛距離の出るウッド、を用意したいなと思ってしまうわけですが。数多くの試合に出ることの弊害はここにもあられます。勝たせたいし、本人が勝ちたいですから。
*5 今年のセレクションの模様とジャンボ尾崎プロのインタビュー(ごく一部)も公式YouTube; ジャンガーゴルフchannel jumgerにあります。「【ISPS ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーセレクション】press公開日」, 公式YouTube; ジャンガーゴルフchannel jumger, 2024.2.5. そのなかでA,B,C というレベルのお話しが出てきます。ジュニアのレベルが徐々に下がっているとのことです。ゴルフの低年齢化が進み、トレーニングの早期教育が進んでいるのにもかかわらず...