2024.8.6
男子7歳時点で異なる点 1
2024.8.6
男子7歳時点で異なる点 1
(部屋からもジュニアを観察)
時差投稿になります。8月1日から開催されたUS Kids Golfの世界大会に参加してきました。そこで学んだことを数回に分けて書きたいと思います。
昨年7月のIMG世界大会@サンディエゴで期待していた結果が得られず、気合を入れて準備して挑んだ今大会。もちろん優勝を目指して渡米しました。ただ私にはそれと並んで、大事な目的がいくつかありました。
ジュニア低年齢では国際大会の上位を占めているアジア勢(例えば日本、タイ、フィリピン)が年齢カテゴリーが上がるごとに米国勢にひっくり返えさせられてしまうのはなぜか。プロゴルファーだけでなく、カレッジゴルファーや年齢的にその一歩手前ぐらいの世界で。
もちろん、そのまま上位を駆け抜けていった諸先輩方がいらっしゃるのは存じ上げておりますし、今後も続くでしょう。ただ大きな流れとしては否定できません、逆転傾向。理由は複数あると思います*1。その一つに、幼少期に(特にゴルフはじめたての頃に)手にする道具があるのではないかと常々考えておりました。IMG世界大会と比べて、息子の年齢カテゴリーだと参加者のなかで米国勢が圧倒的に多くを占めている本大会でジュニアたちがどんな道具を使っているのか、この目で確認したい。Instagramを通じてではなく。それが目的の一つにありました。
Boy7とBoy8は同じ会場だったので、200名近くのジュニアが一堂に会しました。私はフィールドワーカーとしてジュニアのクラブを観察しました。ちなみに今回の宿はゴルフ場内、部屋はパッティンググリーンの目の前。19時を過ぎてもまだ明るく、皆さん練習している。ショットは芝から打てるので、ミスショットかどうか分かりやすい。
結論から言うと、男子7、8歳に限ると米国勢はパターを除いて全てジュニアクラブ、例外的にドライバーヘッドだけ大人用が超少数、でもドライバーのシャフトは長くない。短いものをバンバン振っている。一例をあげると、練習ラウンドで一緒だった米国のジュニアのお一人は我が息子と同じ背丈にもかかわらず、USkids Ultralight 45。流石にこれにはびっくりして、短すぎでしょ?、とパパに聞いたら、「早く振らせたい…スコアを出すなら違うセッティングになるだろうけどね」と。そこまで短くなくても、ドライバーのシャフトはメーカーを問わず、U.S. Kids GolfのFIT STICKの推薦長さの範囲内。
で、関連する2つめの目的になるのですが、どんなスイングをしているのか、そこから何を普段重視して取り組んでいるのかを推察しました。もちろん意図を確認するために、クラブハウスだけでなく、練習ラウンドや試合で共にラウンドした親御さんにも聞きました。この低年齢期の時点でスコアには表れないコアはなにか。
結論は、見た目のスイングの綺麗さは求めず、とにかく早く振ることを重視。スピードが皆さん早い。TPI(Titlist Performance Institute)が強調していた点がそのまま現場で表れていた形です。男子という限定付きですが、ジュニア振りしている子は極めて少ない。シャフトが長くなくクラブ全体が軽いのでそうなるわけで。そしてなにより、スピードが圧倒的に違います。ここが日本で普段遠目で見ているジュニアと一番違うなと思ったところです。ゆったりと綺麗なスイングをしている子が少ないのです。比べると、上位に入っている子でも球は散っている印象で、ダフりもトップも結構ある。日本のジュニアの方が球はまとまっている。それは練習場でも感じました。
今回Boy7で優勝した子も、昨年Boy6で優勝して参戦していた子も、その他、結果としてのスコアが上位も中位(我が息子)も下位も、米国勢は体感的に日本のジュニアと比べて“ハンド” スピードが早い(おそらくハンドスピードの最大地点が違うのもあってそういう見た目の印象に)。世界大会に参加する子たちなので比べる対象が一部異なるとは思うのですが、そもそも手にしてきたクラブが違います。ゴルフを始めた頃から7、8歳の現在に至るまで一貫して、長くなく軽い“ジュニアクラブ”。
低年齢期に長く重いクラブを振り続けるのか、短く(適正?)軽いクラブを振り続けるのか。ジュニア振りから脱せられるのか、そもそもジュニア振りをさせないのか。両立するけども、優先順位は再現性か多様性か、ジュニア低年齢において。
私の見識が浅すぎて理詰めで答えが出るわけではないのは重々承知の上で、それでもはっきり言えるのは、もうすでに男子7、8歳の時点で日本勢と米国勢ではスピードが違います。そのスピードは、大人のヘッドで長いシャフトのクラブを振りちぎり、その結果として得られたヘッドスピードではありません。ハンドスピード(最大地点も)が違うのです。ハンドスピードだけに焦点を合わせると、勝負になりません、今も、そして後々も。というか、日に日に差が広がるばかり。筋トレではないので。その背景には手にする道具の存在がある。
純粋に今回のフィールドワークから得られた見解ではなくTPIの影響を受けておりますが、米国勢はスピード重視。よって再現性を最重要視するジュニア(猛烈な量の反復をしているジュニアに限定)と比べると球が散る。ゴルフに特化していない子もまだ多く、反復量がより少ない? だから試合で負けやすい。でも低年齢期にスピード最重要視、徐々に再現性向上に取り組み、結果的に追い越していく。距離感や再現性は身体能力と道具との関係性が崩れれば崩れるわけでして。計測器で番手の距離をしっかり測って、反復しまくってある程度打てるようになれば、目の前のスコアは良くなる。それに取り組んでいるアメリカのジュニアの親御さんと今回会いましたが、たぶんこれはごく少数派でしょう。そのパパ自身が言うように。だんだん増えてきた、とはおっしゃっておりましたけども。
と書いてきたところで、息子は超少数派のアジア勢としてBoy7に参加したのにもかかわらず、もうこの7歳時点において米国勢とスコアで差が出ているという... その言い訳がましい理由は試合結果(息子)と次回で。
*1 なぜ日本のプロゴルファーが海外で思うような成果が出ないのか。その理由をジュニア期に使用してた道具に求めた見解を本サイトでも取り上げました。例えばこちら。児山和弘, 「注意したいジュニアゴルファーのクラブ選び」, All About, 2011.7.29. また、昨年のIMG世界大会に同行されていたスポーツライター赤坂厚さんが井上透さんへの取材を踏まえて指摘されているのは、男子は欧米勢に比べて身体が小さいから(赤坂厚, 「日本の「男子ゴルフ」が女子より苦戦する理由。世界で勝つのが難しい根本的な原因とは?」, 東洋経済オンライン, 2017.7.23)。松山英樹プロのように体格差を埋めることがまずもって必要。ちなみにこの記事は次の問題意識から始まっています。「ここ数年の世界ジュニアでも、小学校低学年までは日本勢も対等に戦っているが、小学校高学年の年齢からは上位に入るのが難しくなっている」。私がイメージしているのは、もう少し上の世代になります。体格差が将来大きくなるのなら、よりスピードを重視する必要があるのはアジア勢のような気が。ジュニアという文脈を横に置くと、勝てない理由(特に男子)について、賢人たちが議論を展開されておられます。例えば、青木功プロ(「青木功氏 日本人プロが海外で勝てない理由を語る」, ウェブ週刊ポスト, 2016.1.24.)。「時差ボケで体調が悪いとか、洋芝が合わないとか言い訳するヤツが多いけど、それ以前に “お前はここに何しに来たんだ" といいたい」と青木功プロ。今回の大会で涙をのんだ息子に伝えておきました。2位はインドのジュニアさんでしたし。めちゃくちゃ上手い。