親子レッスンの場
親子レッスンの場
Korki Tsurumi Golf Academy(KTGA)
@インドア・スタジオ(東京)
@カレドニアン・ゴルフクラブ(千葉)
(初めてのレッスン, 3歳。奥に私が...)
息子は3歳から、私は?歳から、KTGAの鶴見功樹先生と髙瀬順弘先生に親子共々教えを乞うておりまして、今日に至っております*1。ゴルフを始めるにあたり、ゴルフの世界に精通している知人たちにご相談申し上げたところ、唯一共通してお名前があがったのが鶴見先生でした。私もその前から存じ上げておりまして、そのご実績はさることながら、沢山のゴルフ関連の本を読んだりDVDを見たりするなかで、説明の論理が極めて明確で、レッスンを受けてみたいと思っていたのが鶴見先生でしたので*2、私自身は迷いなく門を叩くつもりでした。ただ、当時まだ息子が3歳ということもあり、こんな小さな子の指導をしていただけるのか不安がありました。基本、個人レッスン。1ヶ月ほど悩んだ結果、断られる覚悟でメールでご連絡させていただき、まずは一緒に来てくださいということになりまして、東京三田のインドア・スタジオに向かうこととなりました。まだ小さすぎて、と断られたら、私はKTGAでレッスンを受け、息子は違うところで、と考えておりました。ジュニアのグループレッスンでしたら、数は少ないですけども未就学児を受け入れているところも探せばありましたので。また息子が大きくなったら先生にお頼みしようと。
記念すべきレッスン第1回目は2020年11月27日。親子レッスンを受講しました。コロナ禍でお互いマスク姿。私も息子も、ボールの位置やアドレスを教えていただきました。あと、私に対してではありますが、オンプレーンのスイングというのがどういうものなのかも。その時のレッスン動画を久々に見返したところ、7番アイアンを手にした息子はひと振り目からハンドファーストでボールを打ち込んでいるではありませんか。インパクトの形がとても綺麗(一方で私は、アーリーリリース…)。鶴見先生からは「ナイススイング。楽しくゴルフして、ルールを守って、怪我しないように」とお言葉をいただき、引き続き翌月から指導を受けることになりました。
今日まで日々の練習の土台となっているのが、先生による解説付き動画です。毎回、私や息子のスイングを撮影しその映像に鶴見先生が解説を加えてくださり、1回のレッスンで3,4本いただいております。それを何度も見返しながらレンジやコースで課題を克服する、というスタイルを続けてきました。私は息子のスイングに対して私見を押しつけることはしておりません。先生の指摘を息子が忘れないように日ごろ息子にそのまま伝えているだけなのです、動画を家や現場で見ながら。練習場で私たち親子の姿を端から見たら(私も同じ打席か隣打席で打っておりますので)、パパが熱血指導しているように感じるかと思います。そしてこう思われることかと。「パパ、あんなに下手なのに、子供に教えてるよ。子供が可哀想に」。ド素人の私が中途半端な知識で息子にアドバイスなんて怖くてできません。たとえ正確な知識を持ち合わせていても、ゴルフに関しては教えた経験がゼロですので、先を見据えた指導なんかできません。
ただそうは言っても、①親御さんと二人三脚で、②親以外の特定のコーチとずっと一緒に(初めは親御さん?)、③段階的にコーチを変えて(親御さんからコーチへと移るケースも多い?、複数のコーチ)、④ほぼ独学(多少、親御さん?)、色々なスタイルがあるかと思います。それぞれのスタイルで活躍しているプロも多いのも事実です。
綺麗に整理できるわけではありませんが、例えば、①Justin Thomasプロ(お父様もお祖父様もプロゴルファー)、宮里藍プロ(ご兄弟も)、山下美夢有プロ(お父様は私と同じく元々ゴルフ未経験者!)、②Jack Nicklausプロ(10歳からJack Groutsさん、それまで父)、丸山茂樹プロ(最初は父、後にツアープロコーチと契約)、 Jordan Spiethプロ(12歳からCameron McCormickさん、それまで殆ど独学)、Collin Morikawaプロ(8歳からRick Sessinghausさん)、③Tiger Woodsプロ、松山英樹プロ(特定のコーチを付ける期間とその都度複数のコーチにアドバイスを求める期間)、渋野日向子プロ、中島啓太プロ、蝉川泰果プロ、④Arnold Palmerプロ、久常涼プロ(ご本人曰く“我流”)*3。
こうしてみると、これがベストだというのはない、と確信を持って言えます。ですので、先ほど私が言った「たとえ正確な知識があっても、教えた経験がゼロですので、先を見据えた指導なんかできません」とはならないわけです。
なかでも③(段階的にコーチを変えるスタイル)が多いのかなという印象があります。世代を問わず、Philip Mickelsonプロ(実に多様です*4)、片山晋呉プロ、Adam Scottプロ、畑岡奈紗プロ(最初はお母様で、その後複数のプロコーチ)、Atthaya Thitikulプロ(タイナショナルチームのコーチと出会いで飛躍*5)など。 この4つのタイプの分類でいくと、私たちは②(親以外の特定のコーチとずっと一緒に)ということになります。②のなかでも、初めは父でもないパターンで、最初から特定のコーチ。正確に言うと、“我流”(特にアンパンマンのプラスチックゴルフクラブ愛用の頃、1,2歳)から特定のコーチ(U.S. Kids Golf Ultralightに持ち替えた頃, 3歳)。1,2歳の頃は、打ち方はおろか、グリップも教えず(私が分かっておりませんので)、手も添えたこともなく、YouTubeでプロゴルファーの試合をみて、身体に負担なく怪我しない程度に息子が思うままに振り回していました。
で、②となった背景は(そうし続けたい背景には)、もちろんKTGAでのレッスンが楽しく、とても良い時間が過ごせているということにつきますが、もうひとつの要因というか頭の隅にあった(ある)ものがあります(実は二つとも同じことを意味しているに過ぎません)。それは、Rory McIlroyプロ(最初は父、8歳からMichael Bannonさん*6)の言葉です。2016年世界ゴルフ選手権の開催直前に行われたインタビューで、そのやりとりをアンディ和田さんがなんと文字起こしをしておられまして、そのなかでRory McIlroyプロがコーチを変えない理由について自ら説明してるところがあります(実際はその後新しいコーチにしたり、元のコーチに戻るといった変遷があるのですが… )。PGA公式ウェブサイトで該当ページが見当たらないので、アンディ和田さんのFacebookからそのまま引用させていただきます*7*8。
Q. You, Jordan and Jason are sort of bucking a recent trend of being developed by one coach and then when you turn pro, going to someone else. When you were at the stage where you were turning pro, did you have many people in your ear telling you you needed to move on from Michael? Why have you stayed with him all these years? What works in that relationship?
RORY McILROY: Yeah, I mean, honestly, yes there, was a part of me when I turned pro, I contemplated going elsewhere and maybe having someone that was already on the road a lot and someone that I could see more often. But I had a think about it and Michael knows my swing better than anyone and knows my swing better than me, basically.
He has videos from, I was eight or nine years old all the way up until now, and I still don't think there's anyone better to instruct me in my golf swing. I really believe that. You know, if it's not broke, don't fix it.
And I feel like with Jordan and with Jason, you're seeing more and more guys adopt this approach that if it has worked all the way through your junior and amateur career, there's no reason -- these are the people that got us to this stage. There's no reason why it's not going to work going forward.
It's great to see that a lot of these young guys that are coming up have stuck with the same coach and the same technique, because you know, golf's a lot about repetitiveness and consistency, as well, and continuity, and if you're jumping from one coach to the other, I just think that's counterproductive.
ざっくり要点をまとめると、“なんで一人のコーチ(Michael Bannonさん)なのかというと、どのコーチよりも自分のスイングを知っているから。8,9歳の頃から今に至るまでのスイングビデオがあって、自分のスイングを上手く指導するコーチは他にいない。反復、一貫、継続、がゴルフの特性。他のコーチに変えたら逆効果になる可能性がある”
その論理でいくと、親子二人三脚でというスタイルはその極致のような気がします。子供のスイングを最も間近で数多く見ているのが親御さん、もしくはその他親族や身近な人(祖父母や兄弟などなど)ということになるでしょうから。
ということで、と単純にはいかないのですが、どうしてもこのRory McIlroyプロの言葉が頭から離れないのです。結局、元のコーチに戻られましたし。ゴルフを始めた当初から私たち親子のスイングを先生に見続けていただいており、息子には3歳からビデオならぬ最新機器で撮影された動画があります(もちろん私の動画もあります)。Rory McIlroyプロの動画は8歳からということですが、まだ息子はその歳にすら到達しておりません。父の私は自分のスイングを磨くことが精一杯で、息子のスイングの面倒をみている余裕はございません。もちろん、根底にはド素人の私が教える(技術面で導く)ことは無理だという認識が個人的には強いということがあります。“我流”でという勇気も持ち合わせておりませし、息子自身、「他人からあれやこれやと言われたくない。なにもかも自分で考えるんだ」というようなArnold Palmerさんを彷彿とさせるような考えや行動も好みじゃないようですし。自分で考えるのは当たり前ですけど*9*10*11。なにより、先生と時間を共にしていると楽しく有意義だと常々感じており、息子も「レッスンまだ?」と言うぐらい、レッスンを待ち遠しく感じている。ラウンドレッスンも楽しい。そして息子と先生との対話に接していると(対話を通じて息子自身、振り絞って考えている)、息子の観察眼と美的感覚と言語能力が高まっていることをひしひしと現場で感じておりますし、やはり子が育つには親以外のところで良い意味での緊張関係が生じる師匠が必要かなと。
ということで、漠然としてはしておりますが、特定のコーチにずっとお世話になる&ちょっとだけ“他の方”にも意見をもらう、というイメージが理想の環境として浮かんでおります*12。“他の方”というのはプロゴルファーとは限らず、練習場の隣打席のゴルファーだったり、敏腕のクラブフィッター、腕利きのクラフトマン、ゴルフ場や練習場の寛容な支配人、切磋琢磨するジュニアゴルファーやその親御さん、そして私の父や義父であったり、ごく稀にわたくし父(今のところ無理ですが)。でも、軸は特定のコーチでブレない。
先ほどのRory McIlroyプロのインタビュー。特定のコーチにずっと指導を仰ぐことのデメリットについては触れておられません。Rory McIlroyプロとMichael BannonさんのやりとりをYouTubeなどで拝見させていただいて、推測するに、ゴルフの技術指導という範疇を超えたものがそこにある気がしてなりません*13。若かりし頃のお二人のレッスン風景(@インドア・スタジオ)を見ているとなんだか涙が出てきそうです*14。私だけでしょうか。この段落と次の段落の文章が書きたくて長くなりました。
ということで(3回目)、親子共々、今後もKTGAでお世話になるのだと確信しております。
2023.12.7
*1 公式ウェブサイト; Korki Tsurumi Golf Academy, Staff.
*2 例えば、鶴見功樹(2007), 『鶴見功樹 王者のスイング:あなたを頂点に導く最新理論の極み』, ベースボールマガジン社.
鶴見功樹(2007), DVD『プリンシプル・オブ・ゴルフ Part1 ビッグドライブ編』, ゴルフダイジェスト社.
鶴見功樹(2007), DVD『プリンシプル・オブ・ゴルフ Part2 ショートゲーム編』, ゴルフダイジェスト社.
*3 主に、プロゴルファーの公式ウェブサイト、アメリカゴルフダイジェスト、ゴルフ関連のブログ、ゴルフダイジェスト・オンライン、アルバネットゴルフの記事などを参照させていただました。プロゴルファーが何歳からゴルフを始めて、どのような指導環境で育ってきたのかについては参考文献とともに改めてまとめたいと思います(というか、もうまとめてあります、ゴルフを再開する際に。息子より年下のジュニアの親御さんに参考になるよう、もう少し整理します)。
*4 「3人目のコーチに師事するP.ミケルソン:スイングに変化は?」, 「ゴルフネットワーク, 2016.2.1. 色々と物議を醸しているPGAツアー1勝のBrandel Chambleeさんが解説のなかで以下のような説明をしています。「私は、ミケルソンのスイングに納得できない部分が多いのですが、同時に彼の才能がうかがえるスイング。アリゾナステート大学時代、ミケルソンは『コーチ達の助言が、自分を上達させてくれるとは思わない』と言っていたそうです。伝説のゴルファーの一人ですが、変える時期にあると思います。今年のミケルソンに期待しましょう」。大学時代のPhilip Mickelsonさんがこのような発言をされていたということで、考え方も変わるのだなと。 ちなみにBrandel Chambleeさんは2016年に 『The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Golf Swings in History』Simon & Schuster、を出版されています。冒頭で、ジュニアゴルファーにとって極めて初期の段階においてレッスンを受ける最高の環境はどこにあるのか、持論を述べられております。一言でまとめると、“ゴルフの世界におけるハーバードはどこか? それは過去の名プレイヤーである”、とのことです。語り口がとてもユニークです。長いですが、引用しておきます。“I’m often asked where I would send my children for a golf lesson if they were just beginning to play. Certainly there are many knowledgeable men and women golf professionals who can set a child on a path to a lifetime of enjoyment playing the game, but when it’s your own children and their education—be it in golf or anything else—a parent wants only the best. For colleges, the choice is often Harvard. But where is the Harvard of golf? While I can point to several teachers who have been very successful at the highest levels and more than a few players who seemed to know what their peers didn’t, in their differences, both of ideas and technique, where is the glitter and where is the glue?”
*5 「新・世界1位は19歳 アタヤ・ティティクル<LPGA選手名鑑>」, ゴルフダイジェスト・オンライン, 2022.11.10.
*6 Michael BannonさんによるレッスンDVD bookもあります。極めてシンプルです。なにはともあれ、グリップとアドレス。Rory McIlroyプロご自身は出演されておりません。あしからず。マイケル・バノン(2012), 『ローリー・マキロイのコーチ マイケル・バノンの6ステップゴルフレッスンDVD BOOK』, 宝島社.
*7 「Rory McIlroy's pre-tournament press conference video/script」, Facebook, Andy Wada, 2016.3.4.
*8 この記事を、本ウェブサイト「2023.12.6 幼少期、中島啓太さんの"そり"遊び」でご紹介した吉岡徹治さんが翻訳されております。「ローリーマキロイ最新インタビュー(後編)」, 一般社団法人 アジアジュニアゴルフ協会(AJGA)公式ウェブサイト, 2016.3.5.
*9 選手とコーチの関係は複雑なようです。丸山茂樹プロのお話が勉強になります。有料記事なりますが、ご参考までに。「丸ちゃんのGreen Talk : 選手とコーチの“良い関係”とは。
~丸山茂樹「いま、どんな人が必要か」, Number Web, 2019.3.25.
*10 技術以前に... すみません、こちらも有料記事なってしまいますが。【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.774「球を打つ技術より人間力を高めることに指導者は力を注ぐべきです」, My ゴルフダイジェスト, 2023.7.17. こちらの記事で言及されておられる映画『ドリームプラン』、公開されてすぐに私も映画館で見まして、大変失礼ながら、わたくしも同じ感想を持ちました。
*11 名コーチとはどのような人のことをいうのか。名コーチに出会う秘訣のようなお話しはされておられませんが、プロを教えるプロという視点から、樋口久子プロが名コーチの特徴についてシンプルにまとめていらっしゃいます。度々すみません、こちらも有料となってしまいますが。そのエッセンスについては私のこの文章に入れているつもりです(上の有料記事も同様に。ただ有料記事なのでそのまま全部出すことはできません)。「名コーチとの出会い 樋口久子」, 日本経済新聞電子版, 2011.7.19. プロゴルファーとコーチとの出会いや関係については、注釈では書き切れませんので、また別の機会にまとめたいと思います(こちらはまだまとめておりません。資料はたくさん収集して読み込みましたが)。
*12 渡米後の松山英樹プロのように、色々な方からワンポイントでアドバスをもらうスタイルは欧米では結構あるみたいですし、日本でも。例えば、渡米前の石川遼プロも。こちらを参考に。「遼クンがプロコーチの指導でスイング改造」, 日刊スポーツ, 2009.3.16.
*14 動画「Rory McIlroy at the swing studio in the Michael Bannon golf academy」, YouTube; MBannonGolf, 2012.2.10. 10秒ほどの短い映像ですが、このインドア・スタジオの雰囲気とMichael Bannonさんがボールを置くシーンをみるとジーンときてしまう。息子を重ね合わせるわけではないですが、息子のスイング映像を見たあとにこの動画を見ると、スイングの速さが... 当たり前ですけど。