2023.12.6
幼少期、中島啓太さんの"そり"遊び
2023.12.6
幼少期、中島啓太さんの"そり"遊び
(昨日も「あと1回 !」と言って帰りたがらない息子)
2023年の男子ゴルフ賞金王となった中島啓太プロ。初めて直接お会いしたのは(一方的に遠くから拝見させていただいただけです)、2021年のZOZO CHAMPIONSHIPでした。息子はまだ未就学児で、平日開催の2ラウンド目を観戦しに行きました。その日は朝から手袋が必要なほど寒く、雨が降っておりました。
初めてのゴルフ観戦だったので、会場マップを渡されてもどのように観戦して良いのか分からず、息子がまだ4歳で、カッパで傘という格好だったので、ぐるぐると歩き回るのは難しいなと思っておりました。会場に着くまでに長い距離を歩いていましたし。高いお金を払ってボーっと立っているのがもったいないので、とりあえず近くのホールに向かうことに。たまたまロープの先で2打目?を打とうとしていたのが、中島啓太さんでした。アマチュアの世界で名を馳せていたのは存じ上げておりましたし、同じ埼玉県出身ということで、誠に勝手ながら親近感を抱いておりました。
「おっ、中島だ」と興奮しながら息子に言うと、「松山は?」と周りを見渡す息子。中島プロには大変申し訳ないのですが、そのとき私たちのお目当ては松山英樹プロだったのです。ただ、松山プロがどのホールを回っているのか分からず、私「世界アマチュア、ナンバーワンだよ」、息子「まだアマチュアでしょ」、私「未来のスーパースターだよ(すでにスターでしたが)」、息子「ねぇ、松山はどこ?」、私「(中島さんがアイアンを振り抜いて)何、この音 !」、息子「パパ、松山、見に行こうよ」... とにかく息子を引っ張りまして数ホール、中島さんの組を追っかけることにしました。次世代のゴルフスタイルを周囲に見せつけるかのようなお姿、そしてその品格溢れる姿勢に感銘を受けておりまして、生の中島さんを見るやいなや、もっと見たいと思ってしまった次第です。
中島啓太さんと同組で回っていた、こちらも世界アマチュアランキング1位の実績のあるMaverick McNealyプロ*1、なんと一緒について回っていたずぶ濡れの私たち親子を見かけると、プレー中にもかかわらず、驚愕の行為に出られました(いい意味です)。周囲の観客も唖然… 間を置いて割れんばかりの大喝采。その様子を当時アマチュアであった中島さんが複雑な表情を浮かべて見ておられました。中島さんから鋭い視線を感じまして。話がだいぶ長くなるので、また別の機会に。
話を元に戻すと、また少し脱線しますが、息子とゴルフをどう取り組めばいいのか、楽しむだけでなく、息子のゴルフ力を飛躍させる秘訣は何かないのかと、ゴルフを始めた当初あれやこれやと考えておりました。それを掴むべく行ったことのひとつに、現在活躍しているゴルファーが幼少期の頃に何をやっていたのかを調べる、という作業?がありました。当然のことながら、「それは昔の話で今はこれをやった方がいいんだよ」ということもありうるわけですし、同じ事をやっていても差が出てしまうということもあるかと思います。他の要因が沢山ある。新しい世界を作るためには同じ事をやってもダメだ、なんていう考えもあります。そしてジャンボ尾崎プロのように、子供の頃にゴルフをされておらず飛躍された方々もいらっしゃる(そうなると、小さい頃から芝で打つとか、スイングやパッティングに関する感性を磨くとか、そもそも…)。ただ純粋に、今をときめく方たちが、どんな子供だったんだろう、小さい頃、何やってたんだろう、という関心もありまして。あとミーハーなところがありまして、真似して子育てに取り入れようと。
で、長くなりました、中島啓太プロの幼少期です。中島プロが未就学児の頃、ゴルフにまつわることで何をされていたのか、皆様、想像つきますでしょうか。あまりいらっしゃらないかもしれませんが丹念に私の文章を読まれてきた方、もうお気づきかと思います。金谷拓実プロが5歳の時にレンジ練習場の横にあったバンカーでひたすら球を打っていたのと呼応するかのように、練習場のバンカーでひたすら“そり”で遊んでいたのです、中島プロ。
拝聴された方もいらっしゃるかと思いますが、高校3年生の中島さんがご自身の原点でもある場所を訪れてインタビューを受けている貴重な動画がありまして*2*3、そのなかで“そり”遊びについて言及されておられます。この動画は、YouTube公式チャネル、アスリート ゴルフ チャンネルで配信されたもので*4、多くのプロゴルファーを育て、ジュニアゴルフの世界を牽引し続けておられる吉岡徹治さん*5がそのチャネルのナビゲーターを務めていらっしゃいます。吉岡さんの指導を受けた石川遼プロや笹生優花プロのレッスン動画も配信されておりまして、必見です。崇拝するかのように吉岡さんの本は何度も熟読しました(タイトルにドキッとします)*6。ゴルフに限られず教育の本質に触れることが出来ます。
インタビューの場所は、埼玉にあるTGAゴルフ練習場のアプローチコース、いわゆる練習場併設のアプローチエリア *7。中島さんは手入れされた天然芝からピンにピタピタとボールを寄せています。手強そうな深いラフからも。そしてその手にある錆だらけのノーメッキのウェッジで、アゴの高いバンカーを指されて、「幼稚園生の頃、あそこで“そり”で遊んでいた」「完全に遊び場です」と。小学1年生のときに本格的にゴルフをされるようになったとのことですが、未就学児の頃、すでにお父様に連れられてこの練習場に来て、天然芝が張り巡らされた場所で遊ばれていたわけです。こうした場所をジュニアに解放し、ジュニアの育成に力を入れられてきたTGAゴルフ練習場の会長、秋山清さん*8には頭が下がる一方で、“そり”遊びを容認した?叱責しないお客様の大人たちにも敬意を表したいと思います。
私はそれを知ってから、真似るべく、未就学児でも出入り可能で周りにも迷惑を掛けそうにないアットホームなアプローチエリア併設の練習場を探しまして、同じく埼玉にある実家近くのスポートピアに辿り着きました。東京と埼玉の県境にあります。小さい頃、何度も近くを通りましたが、当時サッカー少年であった私にとって、このゴルフ練習場に貴重な環境があるなんて思ってもみませんでした。まさか、数十年後、息子と一緒にここでゴルフをするなんて...
TGAゴルフ練習場よりもこぢんまりとしていますが、中島啓太プロが幼稚園生の頃、ひたすら“そり”遊びをしていたのと呼応するかのように、アプローチエリアでひたすら球を打っては文字通りバンカーで滑って遊んでいたのです、我が息子。雪は降っておりませんでしたけれども。冬場は霜の降りたライから打ちに打っておりました。
スポートピアでは誰からも叱責されず、暖かい眼で見守っていただきました。それどころか、とあるジェントルマンは、「おっ、小さな子がやってるねぇ。おじさんがいると集中できないよねぇ。あとでまた来るよ〜」と言って去ったきり、姿をおみかけできなくなってしまいました。まさかこの親子が3,4時間も居座っているとは思わなかったのだと想像します。同時に4,5人入れるエリアとはいえ、今思えば図々しいといえば図々しい。練習場のスタッフの方々にもご配慮いただきました。
また別のレンジ練習場に伺った際には、天然芝のアプローチエリアがなくてもバンカーがあれば、そこでひたすら2人で打ちまくった。もちろん、周りの様子を見ながらですが。現在、息子は小学生にあがりました。場所は変わりながらも、まだ継続中です、金谷拓実プロと中島啓太プロを真似て。まあ、親が真似しているだけで本人はその意識はありませんけども。
*1 PGA TOUR 公式ウェブサイト, Players, Maverick McNealy.
*2 動画「★中島啓太くん アジア大会金メダル母校訪問!」, YouTubeチャネル; アスリート ゴルフ チャンネル, 2018.11.29. インタビューは動画の4分20秒あたりから。
*3 「20年ぶり金メダルの中島啓太 出身小・中を凱旋訪問」, ゴルフダイジェスト・オンライン, ニュース, 2018.9.13.
*4 YouTube公式チャネル, アスリート ゴルフ チャンネル.
*5 一般社団法人 アジアジュニアゴルフ協会(AJGA)公式ウェブサイト, 理事・メンバーの紹介.
*6 吉岡徹治(2012),『あなたのお子さんハタチを過ぎても「天才」ですか?』, ゴルフダイジェスト社.
*8 「大利根ゆかりの令和の怪物に期待!ゴルフ中島選手」, 『クオリティ埼玉』, 2021.11.9.