2025.3.18
緊張感より強制感
2025.3.18
緊張感より強制感
(大きくグリーンを外れる)
昨日は暴風の中、久々にホームコースの東宝調布でラウンドしてきました。キャップもヘッドカバーも飛びまくり。私のドライバーショットはフォローの風にのっかり、過去1番の飛距離。ただ風のせいなのかショットそのもののせいなのか、グリーンをなかなか捉えることができず。親子でスイングをめぐって応酬の嵐が吹き荒れました。
来週の試合を控えて、予想通りいつものように楽しめません。コースに出てるのにスイングばかりに気を取られ、親子でコースに向き合っていない。ラウンドは試合で勝つための作業に終始。帰りのクルマは静まり返る。家ではイライラしながらパッティング。
ただ一点救いがありまして、それは弾道計測器Quadの存在です。こんな小さい子のゴルフに計測器を持ち込むと数字ばかり気を取られてしまう、と購入前は心配しておりました。購入後も考えさせられる動画に接しました。それはイチローさんが母校を訪れ、後輩たちに指導されているお姿です*1。野外にビデオカメラが設置され、投手は、投球フォーム、スピードや回転数が画面に映されてすぐに確認可能。"弾道測定分析機器"を使用して、打者も、打球の速度、角度、回転数や方向などのデータが瞬時に見れる。こちらも外の広大なグランドでのこと。そのデータを大声で選手が伝える姿も。イチローさんはそれを見て後輩たちに次のように語っておられます。
「気になったのは、色んなことがこうデータで見えちゃっているでしょ。でも見えてないところを皆んな、大事にしているんだろうかって。野球ってそれだけじゃないことあるよね。その気持ちがどう動くかとかさ。その感性。データでがんじがらめにされて感性が消えていくっていうのが現代の野球。自分で考えて動く」。
イチローさんは、走塁・盗塁と牽制をテーマに指導され、「これがデータに出てるんだ? 何にもデータに出てないよね。大丈夫か」とデータには反映されないものを後輩たちに伝えておられます。「今日だって聞いたことない話ばっかでしょ。データにないことばっかだったでしょ。その感性を大事にしてね。皆んなの能力高いいんだから。あんまりその縛られないで」と結ばれておられます。
野球とゴルフでは違いが多すぎるし、私は専門家でもなく上のレベルでの競技経験もないのでうまく整理できませんが、昨日のラウンドでは、感覚と弾道との差についてデータを介して接し、自分の感覚を掴もうとする息子の姿勢がありました。表面上、自分で頭を使って考えてはいます。ボールデータだけでなく、クラブデータを見て「こんな感じでこれか」と。
親子でスイングに関して応酬("感覚" 磨きは一旦横に置かれる)、でもQuadを使っていると流石にディスプレイは無視できないので、「あれ、ナイスショットだったのに完全にショートじゃん。10ヤードもキャリーが落ちてる」となり、自然環境と向き合っている感じがゼロにはなりません。無風だったら、ライなのかスイングそのものなのか、色々と考える。自分の感覚と実際の弾道との擦り合わせをして自然環境にもばっちり思考を巡らすことができます。まぁ、その後すぐにスイングに関しての親子の応酬が再び始まるわけですが。そうなっても、クラブやボールの "素" のデータが親子のやりとりにカツを入れて、多少は頭が冷やされます*2。でも数字ばかりに気を取れ、イチローさんがおっしゃる感性なるものが育たない可能性がある。感覚ではなくて感性が。
チーム競技と基本個人競技、直接他者の動きに左右される競技と自然環境に向き合う競技。特性が異なるとはいえ、考えさせられます。イチローさん曰く、「感性が消えていく」。イチローさんはデータを否定しているわけではなく、データに基づいた練習をしながらも、データで見えていないところを大事にしろ、というメッセージを後輩たちに伝えておられる。感性。Quadが救いだなと思ったのは、スイングの感覚と実際の弾道との差の程度に接することができるので、その差が極めて少ないと感じた時に、ライや風といった自然環境と向き合えるところ。思考の先が自分ばかりに向かわず、外に向かう余地がある。そしてまた内に戻ってくる。
感性が発揮されると思われていた?パッティングについても、最近はデータ、データ、データ。グリーンを狙う際にどこに落とすか、ボギーを打たない確率が高いのはどの特徴を備えたエリアか、データ、データ、データ。 弾道やスイングだけでない、コースマネジメントのデータもわんさかあります。
少なくても、昨日のラウンドにおいて楽しさは消えていた。試合を控えて気持ち良い緊張感というより、スイングを安定させるための強制感。スコアを出すための強制感。唯一、笑顔が出たのは、打ったあと「完璧だぁ!」と叫んだ息子の球が横に流れていき、「なんで?」とQuadのディスプレイを見たら「やっぱり完璧だ!」となり、「風の影響すごいわ」と親子で顔を合わせたときのみ。この状況だけをとっても、自然と感覚、には向き合っている。
今日は夕方過ぎにマイボールが打てる練習場に行く予定。しっかり番手ごとの距離を把握して、とまたデータに気を取られてしまう。スイングも安定させて、と。試合に出なければ、こんな感じにならないのに。ゴルフにおいて、イチローさんがおっしゃる、データで見えてないところ、とは何か。考えなくては。ジュニア初期において磨くべきところは何かも合わせて。
「気持ち」。イチローさんが「感性」に関連づけて強調されていた言葉。
*1 "【独占密着イチロー】母校で直面した現代野球の危機 球児に大事にしてほしいモノ," YouTube: 【公式】TBS スポーツ, 2025.1.10. 最新設備が整った環境に触れたイチローさんがカメラに向けておっしゃったこと。「あれは怖いな。高校生どころかプロにとっても邪魔なんですよ。そういう練習があっていいんだけど、毎回あれされたら、だって準備段階からそれされちゃうわけだから全くしよい(?)よね... 答えられない。頭、全然使ってない。まさしくMLBの野球がそうなっていて高校野球でこれをやっているのは母校だしこれは言っておかなきゃのチャンスですよね」。ちなみに、冒頭で後輩と接したイチローさんは、「皆んないい体してるけど。鍛えている感じあるけど、どう?」と語りかけ、先ほどのデータの話に移っておられます。ジュニア時代に磨くべきは身体能力というのは、食育も含めて現代のジュニアゴルファーであれば皆さん力を入れておられるわけで、身体の強さだけでは差が出づらい時代になりつつある印象があります。とにかく小さい頃からその時期に合ったトレーニングを積み重ねる。背の高さとかじゃなく。Rory McIlroyプロやCollin Morikawaプロだって背だけでいえば決して高い方ではない。小学生の頃、背の順で前の方だってその後伸びたプロもいらっしゃれば(「松山英樹に聞きたい72のコト 【DAY1】~振り返るキャリア~」GDOニュース、2015.12.28)、その逆もあれば、生まれてからずっとその世代で高くあり続けてきたプロもいる。イチローさんが強調される「感性」。日々の練習の仕方が大事で、少なくても我々親子にとっては試合の存在がこの感性をなんとなく潰しそうな感じがします。数多く出ても試合に対する向き合い方を変えれば良いことづくしですけれども。Tiger Woodsプロだって、Scottie Schefflerプロだって、幼少期から試合に出まくっていたわけで。
*2 我々親子にとっての理想のQuadの使い方は、Collin MorikawaプロとLudvig Åbergプロの練習ラウンドでの感じ。"Ludvig Åberg: Mic'd Up Major Practice," YouTube:Titleist, 2024.5.15. 動画を見ていると、選手と時間を共にするキャディさんがスマートでないと、おそらくこうした使い方ができない。試合までにキャディとしてのスマートさを磨きたい。試合当日も、何があっても表面上、私は気丈に振る舞う。