2024.9.28
コーチの真髄
2024.9.28
コーチの真髄
(ドライバーの片手打ち)
前回に引き続きPete Cowenプロにまつわるお話です。松山英樹プロが誰かに教わっている、という姿が息子に強烈な印象を与えたようで、動画を繰り返し見ています。
それに加えて、今年の全英オープンの試合前練習でBrooks Koepkaプロを凝視するPete Cowenプロのお姿にも息子は驚いている様子です*1。なぜなら、やりとりを見る限り(何を話していらっしゃるのか、映像から分かりません)、アドレス、しかも目標方向に向いているかどうかの確認だけをしているように感じるからです。試合前ということもあるのでしょうけれども、「そこだけしか見てないの?」と私も息子も思わず声を発してしまいます。
そこまで息子を魅了するならと、Pete Cowenプロのお仕事について改めて触れていたところ、ビビッとくるインタビュー記事がありました*2。これまで検索に引っかからなかったのが不思議。なかでも学びが深かったのが、ゴルファーのどこに着目してプレイヤーとして成長させるのか、という点です。コーチの真髄。
“プレイヤーたちがスイングを大幅に変えようとしているのを見ると心配になるよ。ゴルフスイングに関していうと、改善(improvement)は良いけど、変更(change)は悪いこと。スイングにおいて気に入らないところがあったら、私はそれをプレイヤーの他の動作に統合する。根本的に変えることはしないね。それを強みにすることさえできる。欠点を取り除くことに比べると、良いことが多いのさ。欠点を排除するとなると、他にも複雑な変更が必要になることが多いからね。全く異なる動作を引き起こす可能性だってあるんだから"
スイング改造という言葉をよく聞きます。スイング改造が上手くいったゴルファーもいれば、逆に以前よりも悪くなってしまったゴルファーもいます。癖任せにしていた方が安定するかもしれない。欠点を取り除くと変更だらけ(欠点を取り除くと、それまであった欠点や新たに生じた欠点を取り除く、以下繰り返し)。この引用した箇所だけでも不思議とPete Cowenプロがいう改善と変更は定義せずとも明確です。辞書的な意味というよりも。
欠点を他の動作に統合することが改善。欠点を取り除くこと、それ自体を変えることが変更。で、プレイヤーの欠点を見抜くのがコーチの腕の見せ所。
前回紹介した動画の中で松山英樹プロは右腕をズボンの右ポケットあたりに落とす動作をしています。腕と肩の使い方。このインタビューのなかでは、スイングをクルマにたとえて、トランスミッションの役割を果たす「肩」の動きが悪いと一貫性を欠く、と強調されています。腕や手に対して脳から指示が伝わらないのは「肩」が原因。一貫性を司るのは「肩」。
上述の松山英樹プロの動きを息子は最近真似しまくっております。今日はウェッジやアイアンに飽き足らず、なんとドライバーでも片手打ち。右腕がドンと落ちてくるイメージで?
スイングの変更、とならなければ良いのですが... 心配です。心配しすぎて、今日はラウンドせずに切り上げました。
*1 "ROUND TWO LIVE AT THE RANGE | The 152nd Open at Royal Troon | Friday Afternoon," YouTube;The R&A, 2024.7.19. 動画開始2時間53分あたりから。
*2 "Pete Cowen: The Best Teacher No One Knows," Golf Digest, 2019.6.16. ChatGPTで翻訳できる良い時代です。インタビューではRory McIlroyプロのジュニア時代(13,14歳)の話がでてきます。天才がいるから見てみて、と言われたPete Cowenプロは実際に会って、その場で、上級者でも難しいショットを要求したそうです。高く柔らかいバンカーから、30ヤード先のピンを狙うというもの。もちろんRoryくんはできない。「ほら、できないでしょ」とPete Cowenプロ。するとRoryくんは、「次に会うときは、できるようになってるよ」と言い返す。で、次に会ったときには、完璧にできていた。Roryくんがのちに特別な存在になったのは、自分にとって不可能なことはないと確信し、熱意をもってゴルフに取り組んできたからだ、とPete Cowenプロは説明しておられます。天才というより、早熟というより、いや、その二つを持っていたように思いますが、向上心の塊。そしてPete Cowenプロのこうした接し方も、コーチの真髄。