2024.6.7
道具の原点回帰
2024.6.7
道具の原点回帰
(旧モデルも7番は36度)
先週の全米女子オープンで2位に入った渋野日向子プロ。アイアンのシャフトについては、Fujikura TRAVILやAerotech SteelFiberを使用されていた印象が強いです。今回の全米女子オープンで投入したのは、Fujikura MCI 80のRフレックス*1。2019年の全英女子オープンを制した時に手にしていた銘柄とスペック。SteelFiber i95cw Rフレックスから移行された。メジャーを目の前に控えての原点回帰。
話のレベルはかなり下がります。息子は色んなクラブを試してきて、結局、U.S. Kids Golf Ultralight Series。父の私も、あれやこれや買いまくって試して、結局、Titleistと再び自主契約。他のメーカーさんのクラブも手元に残していますけども。気が変わる可能性、大なので。
息子がジュニアクラブにまた舞い戻ってきた理由のひとつにロフトがあります。飛び系アイアンを使うゴルファーも多いですが、技量を磨いたり距離感を養う点で人によってはデメリットともあるかと思います。Bridgestoneで丸山茂樹プロ、Titleist擁するAcushnetでは伊澤利光プロやBob Vokey氏とも仕事をされていた、ダグ三瓶さん。前にワークショップでその膨大な経験に基づく知見の一部を直接ご教授いただきました。そこでおっしゃられていたことを、先日出演されたYouTube “試打ラボしだるTV ” で強調されておられました*2。道具選びにおけるロフトの重要性について。Tiger Woodsプロが学生時代からロフト角を基本、変えていないことに触れつつ、以下のように長期的な視点から説明されておられます。
「ロフトって結局、距離感なので、一番狂っちゃいけないところじゃないですか、プロなんか特に言うと。何ヤード、0.5ヤード刻みでやらなきゃいけない話ですから、そうすると一番効くのはロフトなので、ロフトって1回決まったら一生変えて欲しくない ...変えて欲しくない要素ではありますね」
身体が強く大きくなれば番手ごとの距離は伸びますし、ロフト以外の特性やシャフトによっても距離が変わるのは当たり前。ダグ三瓶さんが、ワークショップや今回のYouTubeでも指摘されていたのは、相対的距離感というより絶対的距離感だと思うのです。レベルの低い私の話になりますが、たとえば、最初に手にした7番アイアンのロフト角が33度で、その後30度にすると、違和感がでてくる。飛んじゃうよなとか、弾道が違うなと思いながら、それよりも構えたときにすでに違和感が生じている。なかなか慣れない。ロフトを変えずに身体の影響で飛距離や弾道が変わっても、その多くが突如の変化ではないので違和感とはなりづらい。
女子プロで7番で32度ぐらいが主流ということであれば、ジュニア時代から大人用のヘッドを使って慣れるという手もあります。飛びますし。ただ、ダグ三瓶さんがおっしゃるように、寝ているものを立てて打つスイングが身につかない。他にも弊害がある。今回の全米女子オープンを制した笹生優花プロのアイアンは、マッスルバックのCallaway APEX MB。市販で7番のロフト角は34度。まわりの超一流プロが放つボールがグリーンをコロコロと転がりピンから遠ざかるところを、プシューとあがりフワッとグリーンに着弾する笹生優花プロのボール。他にも、世界ランキング上位のプロたちがユーティリティで打つところを、長い番手の軟鉄鍛造キャビティアイアンを手にされている。ストロングロフトのアイアンでも球が上がりスピン量が多くなったとはいえ、7番でロフト角34度のマッスル、それにロフトが寝ている4番アイアンにはそれなりの強みがある。
7番で36度のタイガーロフト。絶対的距離感の極みともいえるTiger Woodsプロのショット。ジュニア時代から基本的にはそのロフト。翻って我が息子。3歳の時、最初に手にした7番アイアンはU.S. Kids Golf Ultralight Series 39(赤色、36・白色には7番アイアンなし)。そのロフト角は38度。次のUltralight 42(黄色)も38度。さらに次のUltralight Series 45(青色)も38度。そして紆余曲折を経て、原点回帰したUltralight Series 48(水色)は、なんと36度。今年マイナーチェンジした新モデルも、36度。同じシリーズなのに2度も違う。ただ偶然にも?ダグ三瓶さんが薦める36度。
最近アイアンを打っていて本人が納得した表情を浮かべないのは、このロフトの変化ではなかろうかというのは考えすぎでしょうか。はやく36度に慣れた方がいいのか、いや34度ぐらいがちょうど良いのではと思うところも。
未就学児の時に使っていたクラブが息子のスイングづくりに大きな影響を与えるとはいえ、その頃に手にしていたクラブに戻ることは100%ありません。シャフトの長さが短すぎですし。ジュニアクラブの多くは、ロフト角を差し置いても、球が上がりやすいヘッドです。でも息子は状況によっては球が上がりすぎるのを嫌って、寝ているものを立てて当てようとする。ロフトはおそらくその前後を使うことになるでしょう。絶対的距離感。寝ているアイアンに慣れる。ダグ三瓶さんが強調されるように、基本は変えない。となると、持たせるべきは、男子プロの主流である34度前後かなと。遅くても中学生頃にはおそらく大人のヘッドを使うことになる。その時に選択するのはマッスルバック一択になるでしょう。それがおそらく道具の実質上の原点(第2の原点?)なると考えます。
本ウェブサイトで紹介した久常涼プロがジュニア時代に使用していたアイアン。久常涼プロは小学3年生からマッスルバック。見た目を重視とのことですが、負の側面があっても(最近キャビティに変えられた久常プロ)、ロフト角という点から考えてもメリットがある。できればジュニア用の軟鉄鍛造マッスルバックがあればなと思います。7番で35度前後で。
渋野日向子プロの今回の話はシャフトに関するもので、ヘッドではありません。ジュニアゴルファーの視点に戻ると、シャフトが硬いと力みを生むことに加えて、しなりを抑えて振る癖が身につくことに。成長してスイングスピードがあがった時にダイナミックゴールドX100(男子プロが使用している他のシャフトを含む)を手にしたとしても、しなりを感じ過ぎてしまう。ジュニア期に身に付けてた、抑えたしなり感は得られない。違和感。絶対距離感なるものも崩れていく。シャフトの長さも、身長や腕の長さに合ったものをその都度に。最初に手にしたクラブによってその人の癖が作られる。日々成長する身体に合わせてクラブも変わる。身体と道具との関係性(内の感覚)は変わらない。ということは、ロフト角も変えるべきか否か。
ジュニアゴルファーのクラブ選びについてダグ三瓶さんと時間を掛けて相談したいです。私のことはもうお忘れかと思います。通りすがりの、いちゴルファーでしたので。実現したら、本ウェブサイトで包み隠さず紹介します。ヘッドの重さやロフトの重要性を直接ご教授いただいたのにもかかわらず息子に大人用のヘッドを使わせてしまったことが悔やまれてなりません。まぁ、すべてTitleistでしたのでダグ三瓶さんには... とは言いながら、マッスルに変えたいなとの思いが少しずつ。また1周してしまう予感が。
*1 「提供したフジクラもたまげた、渋野日向子の「柔らかシャフト要望」」, ALBA.Net, 2024.6.3. この原点回帰について、ご本人の考えに触れたいです。ジュニア時代に柔らかめのシャフトを使われていた、という仮説。フニャフニャの練習用シャフトMCI Practiceも使われておられますし。MCI 80のSは私にとってもちょっと硬く、Rがちょうど良かったです。
*2 「【クラブ選びの鉄則④】アイアンの選び方」, YouTube; 試打ラボしだるTV, 2024.6.2. ウェッジに関してもロフト角はそのまま使用を推奨。クラブは穴に入れるクラブから選ぶ。パター、ウェッジ、アイアン、ウッド。ジュニアもこの順に力点を置いて練習。私が思うに、Tiger Woodsプロも、立たせて調整しながらも、実効ロフト?は56度と60度。PGA、LIVで活躍中の男子プロは、パターの次は、ほぼほぼ60度のウェッジ。Tiger Woodsプロはジュニア時代、56度で技量を磨いたと思うのですが、ジュニア時代から60度に慣れる必要あり? ちなみに息子は4歳から練習用として60度、バウンス4度を愛用、途中から実戦投入。銘柄を色々と試しながら今に至っております。