2024.10.16
内なる対話と答え合わせ
2024.10.16
内なる対話と答え合わせ
(もちろん私は使用不可...)
今年8月のU.S. Kids Golf World Championship。アメリカのジュニアゴルフ環境について現地で調べました。そこでの学びの一つとして、息子の世代から弾道測定器を日常的に使うべきだ、という結論に至りました。
2サンプルなのでほぼ感覚論になってしまいますが、試合会場のレンジで息子より上の世代Boy8のジュニアさんで「すごい!」と感じた子が二人いました。ボールの飛び様以上に、スイングそのものに対して。インパクトを迎える時のヘッド&シャフトの動きが、私たち親子が何度も見返して参考にしているPete Cowenプロが理想として掲げるものを体現していたのです*1。ダウンスイングの途中からヘッドがその重さにつられてインパクトゾーンに自然と戻ってくる&腕が落ちてくる感じがしました。
結果的にはお二人ともトップ10に名を連ねておりませんでした。ただ、こういう子があと伸びするんじゃないかなという思いが今もなお消えておりません。ヘッドスピードも力まずに、はやい。遅くて綺麗なスイングとは違います。そのお二人の親御さんに私の拙い英語で話しかけました。試合前日にもかかわらず、日頃どういう練習をしているのか、どういう環境でゴルフを楽しんでいるのかを聞きました。お二人ともマットの上でほとんど打っておらず。かつてのTiger Woodsプロがそうであったように。DVDやYouTubeでTiger Woodsプロの幼少期の姿に触れると、家以外はほとんど芝の上。レンジで打ちまくっていたという話をお父様Earl Woodsされていますが、そのほとんどは芝のレンジということになりそうです。映像的に芝の上でのショット姿が “映えている” という可能性は否定できませんけども。
話を元に戻すと、そのお二人とも弾道測定器を使っていました。試合会場に持ってきていないのは、まだ周りの目が気になるから。日頃使っている理由は、インパクト前後のヘッドの動きを知りたいから。さらに言えば、芝のレンジやコースでショットするときに、なぜ目の前のような弾道になったのかを本人が理解してそれを技量向上につなげたいから。要するに、データと向き合って自ら考えて欲しいのだと。
私としては、まだこの段階において詳細なデータを見て練習していたら動作がぎこちなくなるし、数字に囚われずスイングそのものに集中する方が技量向上において、特にジュニア低年齢期には良いのではないかと、ずっと考えていました。さらに言えば、あれやこれやと身体に意識を向けるあまりに動作がギクシャクするので、何も考えずに気持ち良さだけを求めて振るのが良いのではとも思ってきました(今もその考えは変わらないかも)。単調すぎて息子は飽きると思いますが、技量向上だけを考えれば練習の半分は素振りだけでも良いのではと。数字と睨めっこしていたらこの時期に磨くべき感覚が鈍くなるのではと思っていたわけです。
ただよくよく考えると、ボールを打てば弾道がはっきりと目の前に実弾として提示されるので、小さいながらも息子はそれを見てスイングに修正を加えています。「今のは左に巻いたな... 被せすぎかな。返し過ぎか、ヘッドの軌道が...」といった感じで。時にはブツブツ言いながら。だったら正確なヘッドの動きに関するデータがあった方が良い。実弾道から推測する方が勉強になるし感覚が磨かれるかも、と考えても、答え合わせが必要なわけでして。本人にデータを見せないというのには限界があります。
言語化していない部分もおそらくあるので、あえて数字を見て言語化し、動作に落とし込もうとしてギクシャクするという側面も無きにしも非ず。でも、アメリカでレンジやコースで正確なデータに基づいて日頃練習をしているジュニアに接してしまうと、感覚が大事だ、なんて感覚的にも言えなくなってしまう自分がおります。焦りではないですけども、ラウンドで多用されている話を聞くと、それいいかもと真似たくなります。
Tiger Woodsプロがジュニアの頃は、今のように弾道測定器は普及しておらず、もちろんジュニアが使う状況でもありません*2。もし使っていたら... 今はスコアという形で結果として現れなくても、コツコツと正確なヘッドデータに向き合って技量向上に取り組んでいれば、後々、圧倒的な差として現れるような気がしてなりません。おそらくBoy8のジュニアのお二人もご活躍されるような気がします。もともとセンス抜群な感は否めません。身体も強そうです。でも、まだ使用月日が短いとはいえ弾道測定器を介した自分自身との対話も背景にあるのではないかなと。検証できませんし、ふわっとした理由にはなりますが。
ということで?、購入に至りました(使いたい理由探しの可能性大?)。2023年のIMG世界ジュニアの事前合宿で、アンプラスさんのサポートのもとGCQuadを使う機会がありました*3。説明を受けていたのでその場でUpNextに申し込んでも良かったのですが、その時は「まだ早いよな。使っても中学生ぐらいからかな。ある程度スイングができてからかな。それにデータに囚われすぎてゴルフが楽しめなくなるよなぁ」なんて考えていました*4。仮に必要だと思っても、GCQuadやTrackMan 4、FlightScope X3などを使えるインドア施設も増えてきて、計測したくなったら気軽に触れられますし。
QuadMAXを手にした息子は、数値を見ながら楽しそうに練習しています。パッティングについて、軌道や打点などをわざと変えながら計測データを見て、「そういうことね!」と言いながら遊んでいます*5。このパター分析ソフトだけで35万円ほど?。なんと、UpNextでGCQuadやMAXを購入するとその割引価格のなかに含まれています(パソコンで使うソフトも込みで)。他メーカーさんでパッティング計測の専用機器もありますが、さらに値段は跳ね上がり、個人使用となるとなかなか手が出ません。
計測器に慣れる必要があるのでラウンドは控えて家でいじっております。操作方法やデータの見方もだいぶ理解できるようになってきました。パッティングについてもボールの離れ様を見てなぜそうなったのかを考えてから数値を見て答え合わせ。そしてなぜそういう動作になったのかも考える。これが楽しそうなのです。芝の上で遊びまくることに加えて、精度の高いデータをもとにあれやこれやと練習することで、技量向上のみならず、楽しさを増やしていければなと考えております。
UpNextでQuadMAXを使うことを日本で最初に特例として認めていただきました。しつこい私に丁寧にご対応いただき、アメリカ本社Foresight Sportsに駆け寄ってくださったアプラスさんに感謝します。松山英樹プロがいまだにGCQuadを使っておられるのに、7歳の息子がMAX。Ludvig Åbergプロも今のところGCQuadのまま。素振りでのスピード計測ができるとはいえ、計測機能の点ではGCQuadと同じです。ただ本体が軽いので、ラウンドで球が散る中年の私が、クラブを何本か持ちながら走ってボールまで行ってショット、さらに息子のところに走ってショット計測するには、ありがたいMAX。
息子は内なる対話を経てから答え合わせ。答え合わせの後は身体へと落とし込む。まだまだ発展途上なので、ぎこちなさが出る可能性がある、というか必ず出る。それを解消すべく、MAXの素振りスピード計測機能を多様する(そのために本機能が追加されたのではと思うほど)。レンジボールの練習場ではヘッドデータのみ。ラウンドではボールデータも加えて確認する。
私はデータ分析屋として眺める。ラウンドでは息子の全ショット計測する。スロープレーにならないためにも、同伴者の私はショットが散らないように技量を向上させる必要がありそうです。
*1 "Worlds BEST golf coach TRANSFORMS my game in 25 MINUTES!!," YouTube;James Robinson Golf, 2022.3.24.
*2 Tiger Woodsプロは弾道測定器に関して現在Full Swing契約ですが、かつてGCQuadを使っていたお姿も(例えば、Foresight Sports Canada, 2018.1.27、こちらでもTwitter;Justin Sandler PGA, 2018.1.17)。TrackManも愛用されているようで、クラブテストの文脈でTrackManの数値についてどの程度頼っているのかを問われて、次のように答えておられます。「だいたい80/20かな。80%は感覚でショットを打ち、20%がTrackManだよ。数字に触れるのは良いことさ。主にスイングパスを確認するためにね。特にパス、ロングショットになるとスピンレートも確認したいんだ。多くの選手は特に飛距離を気にしているけど、すでに僕はクラブの距離感をしっかり把握しているからね。自宅にはゴルフコースもある(笑)。ウェッジの精度もその点ではしっかりと調整できているよ。ウェッジショットでも使うし、他の多くの選手もその目的でも使っている。僕は家でもさ」(Wall, Jonathan, ”ARCHIVE; Tiger Woods talks equipment testing," PGA TOUR, 2018.1.23)。
*3 事前合宿に参加していた全ジュニアのデータを見させてもらいました。特に15-18歳カテゴリーのSKくんのデータが凄まじくて(今月のアジアパシフィックアマチュア選手権に出場)、井上透プロが引き合いに出して解説されていました。一方、息子のデータを見ていると、まだデータ云々じゃないなと正直に思いました、その時は。数字を見たところで何を改善するとか、そういうレベルにないなと。事前合宿の模様の一部はYouTubeで見れます。「【世界ジュニア日本代表合宿】ジュニアゴルファー弾道計測器プログラム」, YouTube;井上透ゴルフ大学, 2023.6.18. GCQuadで何が出来るのかはこちらの動画で(「【PGAツアーで見かけるGC Quad】テストして良かったら買います‼︎はたして額賀は買うのか⁉︎」,YouTube;額賀 辰徳公式チャンネル, 2020.11.4)。 額賀辰徳プロがレポートされておられます。ツアーで戦うプロの視点からどう使えるのかを、私のような一般ゴルファーが学べる貴重な動画です。日本語を問わず他にはありません。
*4 UpNextについてはこちら(UpNext™プログラム, アンプラス)。提供元のForesight Sportsによる説明はこちら(UpNext™, Foresight Sports)。新製品のMaxが販売されるので在庫整理のためにUpNextプログラムが始まったわけではないと思います。GCQuadもGC3同様、併売され、選択肢が増えたように見えますし、そもそも私たちのようにMAXもUpNextで購入できます。ビジネス、マーケティングの延長として第一にジュニアを見ている感じが微塵もありません、私からすると。ゴルフの技量向上、楽しみの増幅、そして割引によって手にするジュニアが増える。ジュニアの段階で日頃からより正確なデータに向き合うことでゴルフにおいてまた別の世界を開こうとする気概が私には伝わってきます。まだ価格が高いとはいえ、UpNext Playerのゴルフの日常をSNSで発信することによってさらに裾野が広がる。親がゴルフ好きで弾道測定器を買って子供がそれを使うといった特殊な環境に限定されないわけでして。逆に私たちの場合は、UpNextで子供が使い始め、ゴルフ好きの親が使えずに指をくわえて見ている、というケース。またこれはこれで新鮮な感じがします。おこがましい限りですが、アメリカのジュニアゴルフ環境に負けないためにもアンプラスさんにはぜひ頑張っていただきたいです。
*5 "Bryson DeChambeau Putting Drill to Master Distance Control," YouTube;Smartline Putting - Nick Kumpis, 2024.6.19. Bryson DeChambeauプロは試合前のパッティンググリーンにGCQuadを持ち込んでおられます。