2026.3.2
世界を目指すジュニアを阻むもの
2026.3.2
世界を目指すジュニアを阻むもの
(ゴジラカード&レンジの左後ろには "全豪オープン仕様ハードコート")
昨日のレッスンで浮き彫りになった課題。さっそく取り組みました。まあその殆どは前々からの継続課題ではあります。レンジでウォーミングアップ(注: ゆったりスイングして、クラブを背中越しに両手で掴み横にブラブラ、そして背中にクラブを抱え込んで捻転)してから、先生の言葉をブツブツ反復しながら時間が流れていく。切り返しのタイミング、捻転、頭の位置。バレエに取り組んでいるせいか単に柔らかいだけでなくゴムみたいに張りもあると感じるのは親バカすぎるか。切り返しで急がなければ捻転が半端じゃない。無理もない。パパにその回転度数を分けて欲しい。
息子の感覚では、バックスイングの終了付近とダウンスイングの始まりのスピードが同じになるよう意識しているらしい。これは帝王のレッスン動画の見過ぎだな。真似てる気配があるけれど、その意味を理解し動作に落とし込むのには程遠い。上述のウォーミングアップを含めて、"Golf My Way" by Jack Nicklaus。
「パパは切り返しで、エイって、力んで早すぎるの。the アマチュアだね。それじゃ、上からくるし、インパクトでスピードでないね、ハハハ」と息子。ちょうど父がキレる寸前でラウンドのスタート時間となり、無言で1番ホールへと向かう。
昨日先生から課題とされたパッティングについては今日は距離感バッチリ。3パットもないし、ショートのミスもない。やはりクラシックL字が合うのかもしれない。5歳から使い続けてますから。いや東宝調布の2つのグリーンに慣れているだけかもしれない。ここで何発パッティングしてきたのだろうか。ベントもティフトンも。4歳からバンバン来てますから。
で、やはり息子に合う道具というものがすでに確立しつつあるなと思いながらも、帰宅して他のパターでパッティング練習してみると、こちらの方が良いかもと感じるパターもある。先月、新調したばかりのスパイダー。慣れる前にこのパターだと養いづらい技術なるものがまだ不足していることに気づかせるためにも、まだラウンドには投入したくない。プロが使っているんだし、クラシックL字なんて今のPGAツアーで見たことある?と言って避けることは私にとって、パターはフルスイングしないので別かもしれませんけど、早くからマッスルに慣れてとか、早くから長めのクラブに慣れてとか、早くからスチールに慣れてとか、早くから重さに慣れてとか、早くからこのソールに慣れてとか、成長する身体と道具との関係性を無視した対応と同じことのように感じてしまう。ただ、L字で球を捕まえる技術を養いたいとの考えは、息子がミスすると、間違っているかも、変な癖がつくだけかも、と心配にはなります。クラシックL字だと感覚を出しまくろうとしてボールと目との位置関係やストロークなどが雑になる傾向は確かにある。ラウンドで整える方針の我々親子からすと、実践の場でパッティングの基準づくりをするならL字に拘らず、家練と同様、他のパターでラウンドする機会を作って良いのかもしれない。
で、話を東宝調布に戻して?、今日は息子のICカードを切り替えました。ゴジラ仕様に。さすが東宝。最近、どんどんゴジラ化が進んでいる。230ヤードキャリーすれば奥ネットのゴジラクッションにボールがあたり、鳴いているようなドスっという音がする。入り口にもゴジラが登場し、マーカーもゴジラに変更され、そしてついにICカードまでゴジラ。で、特典として、ゴジラ入りのタオルがいただける。そんなことを考えながら最終ホールに。いつものようにテニスコートの方から子供達の声が聞こえてくる。東宝調布には広大なテニスコートエリアがある。我々がナイターラウンドを終えるころに、少し世代の上がったジュニアさんたちのグループレッスンが始まる。アプローチエリア横にもテニスコートがある。人数はゴルフレッスンを受けているジュニアさんたちより遥かに多い印象があります。いつもそちらに目が向いてしまう、どんな練習をしているのだろうかと。コートを走った後はコーチの球を打ったり、横への移動を早めるトレーニングをしたり、かなりハードそう。アスリートコースもあるので、遅い時間帯はそれなのかな。時間帯のはやい夕方の方は、小さい子が多く、のんびりやっておられる感じがする。レストランが併設されているので、親御さんらしき人たちの姿が目につく。ちなみに、我々親子がラウンドしていた時間帯はコースにジュニアさんは一人もいなかった。
相手の球を打つ、相手に応じてこちらの動作を行うという面がテニスにはあるので、日々の練習の背景にある考え方がゴルフとはだいぶ違いそうだと見ていて思う。テニスでは男子だと第二の錦織圭(さん)がなかなか... という話にテレビで触れました。体格だ、環境だ、才能だ、などなど、世界的なプレーヤーが日本から数多くは出ていない理由に関して議論が結構なされている。
そのなかでも私が、おっ、と思ったのは、テニス界のレジェンド、伊達公子さんの修士論文です。タイトルは、『日本人テニスプレイヤーの世界トップレベルでの活躍を阻むコートサーフェス』*1。ここでいうコートサーフェスとは、テニスコートの表面の種類のこと。芝や土など。伊達さんの問題意識は、日本のサーフェスの実態が世界的プレイヤーの誕生を阻む要因の一つになっているのではないか、というもの。結論について、要旨からそのまま引用させていただきます。
「日本のプロを目指そうとする子どもたちの練習環境は世界のプレイヤーと異なり、世界トップレベルに到達しにくい環境にある。砂入り人工芝の戦術、フィジカルではハードコート、レッドクレーコートでの試合で勝てないことをコーチは認識すべきである。現在のジュニアが置かれた状況を変え、世界で活躍できるサーフェス環境を提供することは、大人の役割である。ハードコートのサーフェスに切り替えることが、世界トップ選手を育てることへの近道であることを多くのテニス関係者が認識し、豪州のように過ちを早期に正すべきである」
本研究では大坂なおみさんや錦織圭さんを含むトップテニスプレイヤー、コーチや施設管理者などから質問紙調査(対面を含む)でデータを収集しておられ、実態を知るだけでも貴重な論文となっております。伊達さんが強調されておられるのは、砂入り人工芝で練習している日本のジュニアは、世界基準での試合で求められる戦い方が養えないという点。もちろん人工芝での練習に起因するフィジカル面も。引用ばかりで恐縮ですが、ニュアンスを消したくないので、引用させていただきます。
「多くのジュニアにとって目標である身近な大会のサーフェスは、高体連、国体が砂入り人工芝が中心である。大切な育成期に、砂入り人工芝で勝てるプレースタイルが身に付いてしまい、世界を目指すレベルに到達しにくい環境にある。一方、世界トップレベルのプレイヤーの多くは、ジュニア期の練習環境はハードとクレーである。育成、強化期の練習環境の違いが、グランドスラムは勿論、トップレベルへ行くためのポイントを獲得する段階の大会でも勝利できず、ステップアップ出来ないレベルで留まらせている」
才能あるプレーヤーを環境が押し込んでしまう。錦織さんははやくからアメリカにいかれていた。ゴルフの場合、どうか。芝の違い、ゴルフ場の設計思想の違い、芝以外の自然環境の違い、などなど。それを求めて、日本を早くから出るのか。いや、なんか違う感じがする。伊達さんは、論文の中で、こうも指摘されておられる。
「世界では、ハード・クレーが主流であること、国際大会とサーフェスが違うといった、大筋の認識があっても、それがどのような影響を及ぼすかといったことまで考え、理解することには至っていない。ジュニア期の育成・強化期であれ、天候に左右されずに仕事ができることが、最優先のコーチが多かったからである」
本論文の別のところでも、伊達さんはコーチに対して厳しい評価を下している。こうした現状に対して、「コーチが何より危機感を感じていなければ、変わることは難しいということが言える。コーチの立場で、やりやすい環境でやっていても、プレイヤーが戦いやすい環境だけで戦っていても、将来はないと断言できる」と。
ゴルフとテニスを同列で議論するつもりはありませんけど、世界を目指すジュニアに対して、その分野で課題があるのにそれに目を向けていなかったり、そもそもその課題にすら気づかない、意味がちゃんと分かっていないという大人に問題ありだとの伊達さんの看破にはビクッとする。ご本人が世界的なプレイヤーでおられたわけで。
で、東宝調布のテニスコートのサーフェスはいかに。砂入り人工芝コートはもちろんある。14面も。シニアの方の利用も多いし、世界のトップを狙うプレイヤーとそれ以外のプレイヤーの割合を比べたら、そもそもジュニアよりも大人の利用が多いわけで、全天候型を施設として用意するのは当たり前のことだと思われます。ここからがすごい、東宝調布。なんとそのまま言葉を拝借すると、"全豪オープン仕様ハードコート" が2面もある。"砂入り人工芝に対し、スピード感のあるプレーがお楽しみいただけます!" 、"日本では数が少ない「全豪オープン」仕様のサーフェス" と公式ウェブサイトにある。
我々親子が8番ホールのグリーンにあがるとき、そして最終ホールにいるとき、レンジネット越しに、テニスコートが見える。その左側、あの青いコートが、"全豪オープン仕様ハードコート" だと、本日、知る。どおりで常日頃、コーチらしき大人のゲキが飛んでいるわけだ...
私としては東宝調布のゴルフコースの方も、"オープン仕様コース" だと勝手ながら思っております。話が長くなりましたので、また別の機会に。
*1 早稲田大学 修士学位論文テーマ一覧(2018年度)修士1年制)からダウンロードして読めます。論文に関するご本人のお話は、こちらから(内田暁, "伊達公子が没頭した修士論文の中身。砂入り人工芝は日本テニスの大問題," Number Web, 2019.6.24)。コーチに厳しい評価を下した背景には、次の事実があったから。この中にはトッププロも含まれてはいるが、「育成に砂入り人工芝が向いている」と考えていた人が8割にのぼっていたこと。伊達さん曰く、「これには正直、愕然とした」。ゴルフをしておらずテレビで見ているだけの頃から私は、ゴルフの世界においてこれに類することを見出している、ハード面ではなく指導方法において。ゴルフを始めて、さらに今に至るまでその考えは強固になりつつある。ちゃんとした体系的なデータをもとにした整理ではなく、世に出せるものではないので割愛。ちなみに、研究科は違うが早稲田大学の商学研究科で院生を教えていて今から10年ほど前、アスリートの世界を分析している社会人学生がいらっしゃった。本題ではないがその研究知見でも、大人がジュニアを潰している点は共通していた。それを私なりに言葉を用いて表現すると、誤った認識を持った大人たち(個人、組織)による愛のあるサポート。