2025.9.14
年下が年上に勝つ
2025.9.14
年下が年上に勝つ
(相手が強すぎる)
絶好のゴルフ日和なのでラウンドする気分満々なのですが、義理の父母が遠くから来ていることもあり&ジュニアの聖地に休日2人で行くのはなかなか敷居が高く、今日はぶらぶらと。朝から悩みに悩む。
自然と足が向かうのはピンポンパーク。開店前から並ぶ。夕方からショートコースと会長のところに行こうかなと思っていたけれど卓球しすぎて力尽きる。息子は義母にストレートで叩きのめさせてメンタル的に落ち込む。そんな息子をショッピングモールに放ち、私と義父はマッサージ。帰り際に合流して息子はアウトレットにあるテーラーメイドのお店で話題のトルクレスパターを試す。一発目から綺麗なストローク。道具が身体動作を促すことを間近で感じる。ゼロトルクというより僅かながらの開閉感がL字使いの息子にも対応可、とまでは言い過ぎか。素晴らしい道具。卓越したコンセプトとすごい技術。
ジュニア時代における道具選びの悩みについては卓球の世界も同じようでして。試合で基本一本しか使わない卓球なので悩みはゴルフより少ないと思っていたところ、調べてみるとゴルフ以上に親御さんの悩みがインスタやブログに出てきます。
恣意的に、その悩みのひとつをあげてみます。ラケットの重さ。重いと手首を痛めるという話もあり、軽いラケットには他にもメリットがある。まだ歴史は浅いのに初心者から通ってその後全国大会に出場するまでの腕前を持つジュニアをたくさん育てている、つくば明光卓球クラブ。その代表の山下みつおさんが、ジュニア時代に優先して取り組むべきものに絡めて以下のように説明しておられます*1。
「軽めのラケットは多少飛ばないという弱点もありますが私の経験では技術が無いうちは飛ぶことよりもコントロール(レシーブなどの台上の技術)の返すことが優先です」
山下さんは、重量にかなりのこだわりをお持ちで、平均重量に対して5g前後のバラツキがあるとされるラケットを重量指定で仕入れておられる。なぜか。それは、貼り付けるラバーの選択肢が増えるから。そして「練習時間の間振り切れなく疲れてしまって嫌になる」可能性が高い。間をあまりおかずに何百回も連続して振り続ける練習が卓球の世界にはある。
要するに、重量にこだわるのは、怪我予防のみならず、指導者が考えるジュニア時代に磨くべきものを大事に育てながら有意義な練習の量をおそらく確保するため。
国際卓球連盟公認のラバーが1600種類以上あるそうで、表裏に張るタイプもあるため組み合わせは約256万通り*2。ゴルフより悩みが多いかも。さらに、組み合わせ自体は減るけれどジュニアだと成長を考えて違う視点も入ってくる。何を優先して育てるべきか。卓球の場合、山下さんによると「飛ぶことよりもコントロール」。ざっと調べてみると、必ずしも例外的な考えというわけではなさそう。
ゴルフの場合は逆? 道具で飛びを求めないという山下さんが置く前提を踏まえると、道具じゃなくて身体的に飛びが出るなら別の話? 私としては、飛びを拒んでいるのではなくて、身体の成長にあったハンドスピードが出るクラブを持たせたい、という考え。
前に息子より遥かに上の世代のジュニアさんを持つ大大大先輩から「軽すぎてスピードが出過ぎて身体に良くないよ」とのアドバイスをもらって結構考えた時期がありました。一昨年の今頃かな。じゃあ重たいのをゆったり振るのかと… 軽いのを早く振るは結構難しくて出過ぎはないでしょと... 先輩によると、じゃなくて軽すぎなんだよ、と。
結局、完璧な適正なるものを見つけるのは難しいけれど、だいたいの適正さはスイングを見れば分かるでしょ、と私は思う。スピードが早いか遅いか。つまり適正なるものに近い重さかどうか。本人の振り感じゃなくて(もあれば越したことない)、総重量。ヘッドスピードというよりハンドスピード。それに、飛球線後方から見れば、私レベルでもシャフトが長いか短いか、感覚的にすぐにわかる。
軽いクラブ、わかりやすい例をあげるとヘッドが軽いパターは操作性抜群(軽くて別の悪い動作が入るとか考えるとややっこしい)。復刻版じゃないクラシックL字。ドライバーなら、大人用と比べると当たり負けしやすく、良いところでボールを捉えないと飛ばないし散るジュニア用。小さくて軽いヘッド。素材的にも構造的にも素晴らしいものはあるけれど10万円で販売していないわけで。ただ成長する身体と道具との関係性を可能な限り維持しながら取組むのなら、モノとしての良さだけを文脈を切り離して判断してもな、と思ってしまう。
道具が、ある身体動作を誘導する。一方、ある身体動作によって道具の嫌な挙動を見た目上、抑えることは可能。そこにはおそらく無理が身体のなかで生じている。でも反復すれば慣れる。無理、とは感じなくなる。
トルクレスパターと大人用の卓球ラケットを持つ息子の姿を見ていてそんなことを考えた、ラウンドしない穏やかな休日でした。で、そんな考えを息子にぶつけたところ、「難しいこと考えなくていいよ。練習練習」。今日はちゃんと練習できていたのだろうか。
*1 "厳選ラケット群," つくば明光卓球クラブ, 2013.9.20. サイトにはジュニアの親御さんとのやりとりが残されている。10年以上前の投稿なのに最近寄せられた質問に対しても答えておられる。怪我は道具のせいとは限らない。練習方法よりもフォーム。ゴルフもおそらく同じか。グリップの形状についても奥が深そう。
*2 織部隆宏 (2021), "卓球で「子供が大人に勝てる」のはなぜ?“3つの理由”を専門家が解説," Rallys, 2021.1.20. タイトルに惹かれる。理由に触れるとゴルフとはだいぶ違う。「...身体能力や体格に劣る選手が、他の要素でカバーできるのが卓球競技の特徴だ」。その他の要素のひとつが、ラケットとラバーという道具に工夫をもたせること。ゴルフに置き換えると、飛距離を道具でなんとかすること? 限界はあるが上の世代と戦うために道具に無理をさせることはありそうな話。卓球の世界だと無理をさせるのではない。「体格に劣る子供でも各ラバーの特性を活かし、プレーの習熟度を上げることで、大人が取れない豪速球や魔球を生み出し、実力差をひっくり返すことも可能なのだ」。勝つために施した道具への工夫が技術の幅を広げる、と私は勝手に解釈。卓球がますます魅力的に思えてくる。この世界。厚みのある下の世代からの挑戦を受け続ける上の世代という構図がある。その縦幅がでかい。ジュニアゴルファーの親として多様な学びがある卓球の世界。競技の性格上もあってか、若年化がいち早く訪れていた世界の話。