2025.8.4
ゴルフにおける「糸」
2025.8.4
ゴルフにおける「糸」
(運命の7番ホール)
週末のレッスンで出された宿題、その1。インパクト直後の右腕の伸び。息子の意思を尊重して今日は珍しくショートコースを回る前に併設のレンジで反復練習。黙々と宿題に取り込む。話しかけるな、というオーラを放っていたので近寄ることすらできず。先月初めて訪れたダイナミックゴルフ千葉。今回は "ショートコース&打席60球&食事 満喫パック"。その60球を魂込めて素振りを入れながら丁寧に打っていく。連続素振りも復活。この夏、向き合う姿勢が一気に成長したように感じる。
本日の7番ホール。ティーイングエリアに設置されたスピーカーから中島みゆきさんの「糸」が流れてくる。私たち親子がラウンドしていた時間帯は誰一人コースにいませんでしたけど、土日ならこの谷越えのホールでキツいアップダウンを歩くのも時間がかかるので前が詰まって… そこに「縦の糸」と「横の糸」。これも何らかの縁だろう。気持ちが和らぐことでしょう。
今日のように平日で猛暑で誰もいないと、この渓谷に沿って親子で汗を流しているのは何かの運命かなと、何かに導かれてきたのか。なんで数ある選択肢からゴルフをやることになったんだろう。今の状況が将来の何かにつながっているのだろうかと、谷を登る息子の姿を見ていて考え出す。
で、宿題ですが、先生おっしゃる通り、そうやすやすと終わるものではない。おそらく小さい頃からの癖で長所でもあるタメの強さはそれを難しくしている。久しぶりに息子はできないことに対してイライラしている。腕が伸びても球が散る。球が散るのを嫌がってコントロールしたら腕が曲がる。球を押せない。
日没間近の会長のところでもひたすら反復練習。フォローのヘッドの向きはさておき腕は完全に伸びている。球が散っても気にしない。徐々に球の幅がおさまってきたように、みえる。とてつもなく良い音と弾道が生まれる。逆説的ですけど、これぞ反復練習では得られない&削られていく調整能力の高さ。でも息子の表情はいつになく厳しい。なぜならその数が少ないから。
親子ラウンドとはいえ、コースで球が散っても気にしない精神は我々親子ゴルフに多大な影響を及ぼしてきた私の愛読書『Golf is Not a Game of Perfect』を思い出させる*1。著者Bob Rotella氏の指導を受け本書に推薦の言葉を寄せたTom Kiteプロ。ゲームに対する精神面と肉体面の割合に触れて以下のご説明。
「一般的には、うまくなればなるほど、精神面に負う割合が大きくなるといえる。もちろん、スイングもままならない初心者には、試合の80パーセントから90パーセントが精神面にかかっているのだといっても、理解は望めないだろう。しかし、誰もが高いレベルのショットを放つPGAツアーでは、少なくとも90パーセント以上が精神的な要因によって勝者と敗者が分かたれている(翻訳書; p.5)」
低年齢ジュニアの試合ですら、この精神面が大きい気がするのは私だけじゃないはず。早く始めた方が、そして累積練習量の多い方がスイングが安定しているのでスコアは出しやすい傾向にあるのかなと思います。ただ、それだけじゃない気がする。PGAツアーで勝つために求められる精神的なものとは比べようがなくても、ジュニア時代からその日々におけるゴルフの取り組み方次第で、将来圧倒的な差が出るのではと。
そう考えて4年以上前から息子とゴルフしてきました。「糸」を久々に聞いて、しかもゴルフ場で触れて思い出したのは、Bob Rotella氏とTom Kiteプロの出会いの光景(どんだけゴルフのこと考えてるのか...)。Tom Kiteプロは「博士との出会い」「博士が私を育ててくれたというだけでは、とてもいい足りない」と推薦文で書かれている。
ツアーで60度ウェッジを初めて使い、ボーケイウェッジのKグラインドの生みの親ともなると、息子との縁を勝手ながら感じざるを得ません*2。60度のウェッジをこよなく愛し、私のサブ器のTグラインドと並んでKグラインド(ローバウンス)を時たま遊びで使う息子ですから。最近はKグラインド・スターを試したいと贅沢を言う(私が欲しいだけか)。
Tom Kiteプロとの遠く長い「糸」。そして飛躍して、肉体と精神の「糸」。
*1 Rotella, Bob (1995), Golf is Not a Game of Perfect, Simon & Schuster (菊谷 匡祐訳, 『私が変わればゴルフが変わる』, 飛鳥新社, 1996). Dr. Bob Rotellaは、Rory McIlroyプロのマスターズ制覇を支えた存在の一人でもある("Rory won the Masters on Friday morning. Plus, other takeaways from Dr. Bob Rotella," GolfDigest75, 2015.5.12). 本書の最初で示される問い。「練習場やパッティング・グリーンでは何千回となくうまく打てたのに、それと同じ動作をなぜ試合ではくり返すことができないのか?(翻訳書, p.1)」。いわゆる最新のイップス研究とは別の角度からの議論。私としては、Bob Rotella氏と最新のイップス研究(反復練習の上手い実行と絶妙な回避)をベースにこれまで息子と取り組んできた。特に最初が肝心だと思い、未就学児の頃は特に。途中、スイング形成に力が入った時期もあったが徐々に原点を取り戻し、今に至る。