2025.12.25
近くて、遠い場所
2025.12.25
近くて、遠い場所
(合掌)
尾崎将司氏のご逝去の知らせに驚き、心よりご冥福をお祈りいたします。ジャンボ邸で後進の指導にあたられていて、そのご様子をインタビュー記事や動画等を通じて触れてきました。なかでも印象に残っているのが、7年前の2018年、ジャンボ邸で開かれたゴルフアカデミーのセレクション。その際にジュニアにむけて語られたお言葉です*1。
「本当にゴルフが全てだ、自分で好きだ。これからの人生、やっぱり自分の目標を達成するまで… 自分が好きだからやってるんだ、自分が好きだからこういう努力に耐えられるんだ、毎日できるんだ。…技術の競い合いの場じゃない。努力の、努力の競い合い。努力だけはみんなに俺は負けない。スポーツは精神的な面が… 精神的な面が左右するのは練習なんだ。練習が1番気力がいる、根性。…地道な努力。絶対に自分は人よりも努力することは負けてない、そいういうふうなことを自分で確認する日々を… ここは本当に大学院みたいなところだから。研究して実験して確認して、そういう場所だから。焦らずに… 将来必ず自分がこういうふうになるとか。だからやっぱり目的とか目標というのはね、あんまり遠くに置かない方がいい。ゴルフってのは壁ばっかりだから。ちょっと試合で良くなったなと思ったら、またすぐ壁。また良くなったら壁。そんな壁。よくあの、風景画とかに山があって、1番最後に遠い富士山みたいな山があって、みんな富士山見るのね。あそこまで行きたい。でも1番行かなきゃいけないのは1番手前の山を越えること。で、それを超えたらね、こんど次にその山を。それで最後に富士山。だから目標っていうのは自分がやっぱり届くところに目標を置かなければいけない。遠いところばっかり行って、うわー、俺はダメだな、そういうようなギャップの世界で、挫折してしまうようなことも多い。そうじゃなくて、着実に自分が私はこういうに、今回はこういうところを自分で超えていきたい、これは超えられた、じゅあ次はこれだ。そういう目標の設定。そいうのをしっかりして。まず、基礎、基本。この二つ。これはもう必ず先になって助けてくれる。球を打つことだけが練習じゃないぞ。ここへ来たら必ずもう朝来たらタイヤ引っ張ったりダッシュしたり。いろんなところからそういうふうな基礎から始めなきゃいけない。わかったか」
「はい」とジュニアたちが一斉に返事をする。
その場にいるジュニアの皆さんよりも年齢が上がりますが、20代の時、わたくしは大学院に長らくいたので、"研究して実験して確認して" というジャンボ尾崎プロのお言葉の意味を、ほんの少し分かるような気がするのです。若くて、何処にでもいけそうなのに、目の前では極めて地味な時間が流れていく。プライベートを除き、研究生活上は同じ日が何度も繰り返されていき、振り返っても特徴がなさすぎてその日その日に色の違いがなく、記憶に残らない。朝起きたらまた新しい1日が始まる、なんて思えなかった。それが人生の方針だったとしても。この時に、上述のジャンボ尾崎プロの言葉に触れていたら、だいぶ人生が変わったかもしれない。ただその時には今のように受け取ることが出来なかったと思う。いきなりテッペンを目指す若造。目の前にある山を越えることに全く魅力を感じない。
いつも会長のところで練習しながら、ジャンボ邸のことを思い出す。そちらの方角を見ながら、"今日もあそこにジャンボ尾崎プロがいらして、若手の指導をされておられるのだな” と想像する。そのイメージを、広大な芝の環境で練習している息子の姿に重ね合わせる。
今日も会長のところで日没まで過ごす。Hプロ(ヒロプロ)が途中、「球、打とうかな」と私たちに真横で練習開始。これはラッキー。久々に見させていただいた。まずはラフから手前ピンにむけて。音がヤバい。今度は、バンカーから奥ピンを低く重い球で連続してビシッと止めたり、さらに遠いところに目掛けて少し弾道をあげて連発で。バンカーショットというより通常のショット練習? こちらも音がヤバい。もちろん息子はさっそく真似するけど… バンカーのなかでコツを教えてもらう。次は、ベアグランドに球を転がしてそこから奥ピンを狙う。音がヤバい。最後に、フェアウェイや左足下りのライに場所を移して奥ピンへと打つ。これまた音がヤバい。弾道は言わずもがな。低く綺麗な弾道を描く球を打つ練習の工夫を教えてもらう。ワンポイントで一瞬だけど、教えてもらうのはほぼ1年ぶり。2024年12月28日以来。会長のところでは明日から、ルーティンのバンカーに加えて、この左足下りの傾斜とベアグランドが息子の指定席だな。
帰り際にヒロプロのお母様からジャンボ尾崎プロの若かりし頃の逸話を聞かせていただく。観客で溢れかえった試合会場でジャンボ尾崎プロに遠くから声をかけたら笑顔で頭を下げて挨拶してくれたそう。圧倒的な強さを誇っていた時代に腰がものすごく低かった、と。テレビでのイメージと実際はかなり違いがある、と。ジャンボさんがいなかったら今の日本ゴルフ界はない、と。
時期的にジャンボ邸よりも前に会長がこの場所をつくられたことを、本日、初めて知る。ここで5年弱、息子と球を打ち、その球拾いをするために、これまで何百回、おそらく何千回とグリーンにあがってきた。その度に私は、ハウスの遠く後ろを振り返る。ジャンボ邸の横にある練習施設のネットが見える。ほぼ毎回、私はそこを眺めてきた。会長のところを訪れ、ジャンボ邸のことを考えなかったことはこれまで一度もない。
いつもと同じように遠くを見つめる。日没をむかえ、本日最後の玉拾い。息子に事情を伝え、両手をあわせる。小雨がちらつき、ほんのり霧が立ち籠めていた。なんとも寂しい気持ちがする。
*1 "Jumboゴルフアカデミーセレクション・トップジュニア達の一日," YouTube:ジャンガーゴルフchannel jumger, 2018.3.24. 集音マイクが遠いため、聞き取りづらいところは ... に。男子が世界で通用するための提言も併せてされておられた。「もうちょっとな、男は大きくなった方がいいな。今はやっぱりこれからのゴルフの世界もな、やっぱり体力勝負のところはあるから。やっぱりもう球が飛んでいかないかぎりなかなかそういうレベルは世界的にあがってきてるし。まぁ日本のプロも体がそんなにあるわけではないけど、でもみんなやっぱりよく飛ぶようになってきている…」。そのためにも、"基礎、基本"。何度もこのサイトで触れてきたが、ジャンボ尾崎プロはジュニア期のクラブ選びや取り組む姿勢に関して親に警鐘を鳴らしておられた。一度限りではない、複数回にわたって。子供じゃなくて、親。しっかりと受け止め、継承していかなければならない、と私は思う。