2024.6.4
道具づくり
2024.6.4
道具づくり
(おもたせ*1)
「...セベは自分で木を削り、クラブの形にして、石を打っていた。5歳くらいのことだったと思う」*2
セベこと、Seve Ballesterosプロ。全英オープン3勝、マスターズ2勝、そして日本オープン2勝のカンピオン(チャンピオンのスペイン語)。19歳で欧州ツアー賞金王。世界ランキング1位。
セベの伯父Ramón Sotaプロはマスターズ6位の実績を残された。Ramón Sotaプロは、セベが9歳の頃にすでにその才能に気づかれ、世界的なゴルファーになれると確信していたそうです。Seve Ballesterosプロと26歳の時から親交のあるハル常住さんの著書には、お兄様のManuelさんの言葉を通じて、幼少期のお姿が描かれています。
Manuelさんによると、当時ゴルフ用品は高価だったので、セベが5歳の頃には自分でクラブをつくり、海辺や畑に堀った穴に向けて打っていた。7歳になると、家にあった古びた3番アイアン(シャフトが付いていないもの)に木を刺していたとのこと。
「セベが8歳のとき、使い古した3番アイアンをあげた。喜んでボロボロのクラブをいつも磨いていたよ。表面が切れたボールをあげると、カバーがすれて中のゴムが出てくるくらい使っていた(p.19)」
小さい頃から大人用の3番アイアンで練習されていたことに驚きです。おそらくマッスルでしょう。我が息子においては、私がクラブという道具にはまっていることもあり、ジュニアクラブを購入、借りたりカスタムしたりと、息子の前を沢山のクラブが通過していきました。それが当たり前だと思っている節がある息子。道具に対する感性みたいもの、目利き力も磨かれているはず。さらにその上を行くなら、道具を自分でつくること以外にないかと。
息子は、試している60度のウェッジを手にして、「こりゃ、バウンスが強いな。トゥがはねる。あたりすぎだぁ」、別のウェッジについては「これじゃ、払い打ちしかできないよ。これはないなぁ」とも。そこまで言うならソールを自分で削らせようかなと思ったり。全体のシェープが崩れてしまうので通常使用はしないと思います。でも感覚が磨かれそうな気がするので工房に掛け合って取り組んでみようかなと。それと同時に、3番アイアンを手にしようかなと、というのは冗談です。
昨日は偶然にも私の仕事場に教え子の二人がお見えになりました。ひとまわりほど私より若いだけ?ですけども、子育てしている身からすると、どうしたらこんなに前向きでよい子が育つのだろうか、と考えさせられます。大学を卒業されてから今に至るまでの年月、お二人の成長に比べると私は... 相談を受ける立場なのに、私の方が学んでいることが多い状態。
お一人は、これまでの実績が評価され自ら新たなプロジェクトを立ち上げて実行に移されつつある。立ち振る舞いを含めて、彼は男の私が惚れ惚れするほど格好いい。もうお一人は、息子がベービーの時を知っておりまして(ゴルフ場併設のラフォーレ修善寺で一緒に撮った写真もある)、その時から7年あまり。息子も成長しましたし、彼女も濃い時間を過ごされ、今、新たな門出を迎えようとしておられる。私が(私ごときで大変恐縮ですが)羨むようなキャリアをお持ちのお母様のもとでも今後仕事をされ、 親子でとても良い時間を過ごされる気がしてなりません。幼少期に子どもにベッタリはりついても(今の私です)、あるいは(ではなく?)、そうではなくても、前向きで自立した大人になれる。おそらく彼女が小さいとき、お母様は仕事が忙しくて娘さんにベッタリではなく、まわりの家庭に比べて子どもと一緒に過ごした時間が少なかったのではと察します。その後、大人になって仕事経験を重ねた娘さんがお母様のところに近づいてきて、お互いパラレルキャリアの一部として時間を過ごされる*3。羨ましい限りです。お母様から、これまでの仕事内容と仕事観、そして子育て観をぜひご教授いただきたい。それを切に願っております。
*1 横須賀 松月製菓。創業は明治。明治天皇に献上したこともある老舗。お店ですべて手作り。蕨っこ、とろけるようで美味しかった。伯理くろふね饅頭、買いに行こかな。
*2 ハル常住(1989),『カンピオン:世界最強ゴルファー、セベ・バレステロスのすべて』,日本文化出版。 セベの技術が本人の言葉を交えて紹介されています。例えば、50-70ヤードのバンカーショットについて。「俺は、手の振りを速くして、エクスプローションで70ヤードまで打てるんだ。...簡単に打つならやはり、ピッチングでクリーンに打つのがベストだと思う。でも、俺の場合は、手の振りの速度の調節だけで、近いところから、70ヤードまで打っている。それが俺にとってはいちばん簡単な打ち方なんだ(pp.67-68)」。ご本人のバンカーショット写真入りです。ちなみに本書の帯の裏には「ボールは打ち上げるんだ!」との文言が...ダウンブローの負の側面についても。
*3 パラレルキャリアについて。Drucker, Peter F. (1999), Management Challenges for the 21st Century, New York: Harper Business. (上田惇生訳,『明日を支配するもの: 21世紀のマネジメント革命』,ダイヤモンド社, 1999)。 本業と関わる他の仕事を持つというより、どれが本業かわからず、関連し合う複数の仕事・キャリア、というのが今風でしょうか。