2024.6.25
小学生時代の技術指導
2024.6.25
小学生時代の技術指導
(時が経つのが早い)
先日、ふとしたことで、Wikipediaで大魔神、佐々木主浩さんのページを読んでいたら、ある文言に目がとまりました。
“小学校時代の自身の経験から「中学生までは、厳しく叱責せず楽しく野球をやらせるべき」との考えを持つ。小学生からアドバイスを求められても技術的な指導はしないという” *1
さっそくこの文言の引用先のご著書を購入して読みました*2。3歳からキャッチボール、小学1年生から軟式野球を始められたそうです。佐々木さんは幼少期を振り返る章で、小学生に技術的な話をすることは避けるべきだ、と主張されておられます。佐々木さんは全国各地で子どもを指導するなかで、フォークボールの投げ方や速いボールを投げる方法について頻繁に子どもたちから聞かれるそうです。でも一切、技術的な話はしない。技術指導にこだわる指導者に対して、警鐘を鳴らしておられます。その理由は、効果はないし、それよりも大事なことがあるから。
「一応基本はこうして、ああして、と教えるのは構わないだろう。けれども、それを幼い子供達が果たして完璧に行えるだろうか? 体自体が成長の初期段階にあって、体の動かし方も十分にコントロール出来ない年齢なのに、技術指導に拘るのは無理がある。そういうことを強要する前に、まずはプレイする楽しさを全身で味わうことの方が重要なのだ(p.28)」
佐々木さんご自身が小さい頃にそのような環境で野球をしていたとのこと。お父様が野球経験ゼロ、ということもあって。「楽しいから、もっとやりたい。もっと上手くなりたい。上手くなって勝ちたい。...逆に自主的・自発的な向上心を無視して押さえ付けられていたら、きっと嫌になっていただろう(p.29)」。親からやらされたという意識がなく、親の期待にこたえて取り組むという気持ちも、たぶん皆無。上っ面だけの楽しさで、やらされて上手くなってプロになっても、おそらく最高水準には到達しない。佐々木さんが言う技術指導には、「この子はひじが下がっていて、投げ方がおかしい」という、一見、基本と感じるものも含まれています。これすら、してはダメ。
野球とゴルフを同列で議論するのは無理があると思います。ただ、指導者に対して警鐘を鳴らしておられる内容とその理由については参考になるところが多い。指導者のみならず、野球経験ゼロの親御さんは、言わずもがな。技術を色々と教えると子どもが楽しそうだとか、技術を子どもが知りたがっているのだから関係ないでしょう、とはならない。佐々木さんは子どもから聞かれたとしても答えない、というわけですから。ゴルフはジュニア時代から技術指導があまりにも多いような気がします。かなりレベルの高いことも。私の素人的な感想です。悪い癖が付かないようにとは思いながらも、そしてスイングの基本は早い段階でたたき込まなければと感じながらも基本とは何かを考えさせられます。見た目のスイングをいくら綺麗にしても...
楽しさ、に話を戻すと、ゴルフのために?通い始めた運動教室もバレエ教室も、私が全く無知ということもあって息子にやらせ放題です。一方、ゴルフは少しずつ私が勉強していることもあって(運動もバレエも多少は学んでおりますがその比ではありません)、スイングを見ていると、こうして欲しいな、という点が出てきまして、口で言わなくても表情にでてしまいます。そんな父の表情を見て、息子はおそらく、あっパパ怖い顔している、僕のスイングの何処かに不満があるんだなぁ、と感じていることでしょう。
今日の運動教室では時間がきて終わると、「もう終わりなの。早すぎだよ、まだやりたいよ」と言い寄ってきましたが、そのまま訪れた外のレンジで打ち込んだ後に終了時刻がくると、何も言わずにクラブをキャディバッグにポンポンといれていく息子の姿。今日のレンジでの過ごし方を振り返ると、多様な球筋でショットを放っていましたし、練習というよりも、途中から完全に遊び。大魔神のご著書を読んだ直後ということもあり、ああだ、こうだ、言わずに口数少なく見守っていましたので、楽しさは感じていただろうと思いたい。
*2 佐々木主浩(2010),『奮起力。人間「佐々木主浩」から何を学ぶのか』,三省堂書店. お父様は当時、森永乳業にお勤めで、小さい頃から牛乳を大量に飲んでいたそうです。早産で、早生まれであっても未就学児の頃から周りと比べて大きかったのはそれが理由だと。同じ章で、自発的に練習に取り組む背景のひとつとしてライバルの存在をあげておられます。特に小中時代。ゴルフに置き換えると、ビビって試合に出ないとライバルが見つからない。勝てる試合ばかり出ていても、ライバルに出会えない。チームスポーツでも個人競技主体のスポーツでもそこは変わらないな、というのが読後の感想です。最終章「そして今、これから」では、プロを引退した後の生き方や考え方が述べられていて、私ごときでも大変参考になるとともに元気をもらえるアドバイスが沢山盛り込まれております。ゴルフを楽しんでいることにも触れられています。ゴルフに関して本書ではあまり記述がありませんが、佐々木さんがゴルフをしているシーンは動画や記事で数多く見られます。そのなかで野球とゴルフとの違いをこう述べられておられます。「野球は周りがカバーしてくれるけど、ゴルフは自分が失敗したら終わり。ゴルフのほうが精神的に来る」(「大魔神の決意「また親子で頑張ります」佐々木主浩さんは堀川のプラス思考にも感服」, 公式ウェブサイト;日本ゴルフツアー機構, 2023.5.18)。