2024.6.14
My Swing
2024.6.14
My Swing
(息子も好きなFred Couplesプロ)
練習内容が間違っているのか否か。再現性の向上という点において、どの癖を活かすべきなのか。
その判断については先生にお任せする。その対極に位置づけられるのが、自分だけで判断するスタイルかと思います。いわゆる、自己流。その中間のひとつとして、お任せ前提で先生と対話しながら考える。長期で見ていただく先生と対話するためにも自分たち独自で学んでおく。現在の私たちのスタイルです。
最近、コルフにおいて息子は父の話をほとんど聞かなくなりました。常に一緒にボールを打っていますので、私のゴルフの腕が大したものではないことが一目瞭然。「偉そうに。自分で出来ないくせに」と思っていることでしょう。先生が指摘するポイントだけそのまま伝えているだけですが、それだと「分かってるよ!」となってしまう。「パパはゴルフを教えるプロじゃないじゃん!」とも言うように。息子の技量向上だけを考えると、父はクラブを握らない方が良いのではと思ってしまいます。ジュニアと同じ練習量をこなしていて、体力もお金もなくなります。費やす時間はほとんど変わりませんけど。
さらに、先生のアドバイスをそのまま素直に取り入れず、なぜそうする必要があるのか、あれやこれやと考えるようになりました。それはそれで大人になったなと思う一方で、現状のスイングを変えようとしたがらない雰囲気が少しずつ出てくるように。自己流とまでいかなくても、僕のスイングは僕が一番分かっているんだ、と言わんばかりの態度でして。
現在米国で活躍している若手プロゴルファーでは極めて少ないですけど、自己流でゴルフをしてきた、とおっしゃるプロゴルファーは世代が上がると結構いらっしゃる。でもよくよく調べると、ワンポイントでプロに見てもらったり、シングルプレーヤーやゴルフ好きの親御さん、その他、第三者からスイングについて意見をもらったりしている。本や映像を通じて自ら学んでスイングづくりに取り組んでいて第三者から何もアドバイスをもらわなかった、というケースはほとんどありません。というか、厳密な意味では、ない。誰ともラウンドせず、誰からも見られない状況や声が掛けられないオーラを身に纏って練習しない限りは。
Fred Couplesプロの唯一のレッスン書『Total Shotmaking』*1。メジャー優勝経験者で自己流に近いと思われるFred Couplesプロですら、スイング知識は独学で、特定のコーチはジュニア時代にはいなかったけど、スイング自体はラウンドをいつも共にする大人や友人の父に見てもらっている。その著書の序文で、自らのスイングは自己流だ、と強調された上で、癖という言葉は使われていませんが、考えさせられる一文があります。
「誰に教わったわけじゃなく、自分流のスイングだからこそショットは安定し、どんなときでも自分にとって理想的なスイングができるということだってあるのです(翻訳書, pp.3-4)」
これが “My Swing” だ、ということです。そのゴルファーの本能的な動作を封じ込めて、畳みかけるように練習量をこなしても、高いレベルにおける再現性向上にはつながらないのかと。著書によると、11歳の頃、お兄さんの友人から中古のゴルフセットをもらってゴルフを始めたそうです。基本的な考えは、「あまりゴルフを難しく考えない」というもの。なぜならゴルフはレジャーだから。楽しむものだから。それが、“Super Relax” の原点。さらに、原点のひとつとなっているのが13歳の状況です。それに絡めてジュニア時代の練習に対する向き合い方を説明しておられます。
「なんとか自分で工夫して、よーし、これでいい、と思ってチャレンジする。失敗する。また、チャレンジする。そういう楽しみと工夫が、いまの僕のスイングの基礎になっているわけです(翻訳書, p.260)」
昨日に引き続き、父の私はスイングについて何も言わず。今日は特にSlow Motion Swingとヘッドの入り方の確認。自分で考えながら取り組んでいるように見えました。それはゴルフの練習において、本人にとって最大の“楽しみ”なのかもしれません。父がガミガミ言うと、ゴルフの練習はどんどん作業に近づいていく。それに、自分で考えなくなり、“楽しみと工夫” が消滅してしまう。
Fred Couplesプロの『Total Shotmaking』。技術論もさることながら、それ以上に大切なものを読者に伝えようとしている気がしてなりません。
*1 Fred Couples (1994), Total Shotmaking: The Golfer's Guide to Low Scoring, Harpercollins (三田村昌鳳訳,『フレッド・カプルスの冒険的ゴルフ』, 小池書院,1998). プロ時代に見てもらっていたコーチからは、スイングが崩れたときに立て直す方法を教えてもらっていたそうです。すでにスイングが出来上がっているので定石から外れていた多くの部分も修正はしないという方針。逆に、ジュニア時代だったら修正されていたのか否か。癖を活かしたから今があるのか否か。本書は次の文章で締めくられています。「それ以上に何がうれしいかというと、僕が中古クラブで覚えた自己流のスイングが世界に通用したということです。ただ漠然と練習するのではなく、自分なりに試行錯誤を繰り返したことがいい結果につながるのだと思います。この本では、僕が実際にトーナメントでやっていることを紹介しました(翻訳書, p.275)」。グリップからトラブルショットまで、Fred Couplesプロの知見がふんだんに盛り込まれています。究極の“Super Relax”を求め、長くゴルフを楽しみたい大人のアマチュアゴルファーにとっても最良のガイドになること、間違いありません。