2024.1.27
フィールドの中心から徐々に離れる親
2024.1.27
フィールドの中心から徐々に離れる親
(Nick Dunlapさんのタッチダウンに釘付け)
PGAツアーで33年ぶりにアマチュア優勝されたNick Dunlapさん。プロ転向されましたのでNick Dunlapプロ。初めてゴルフの試合に出場したのは7歳で、ハーフを38で回ったそうです*1。7歳の時のスイングを見ると、少し長めのドライバーを振り抜いて快音を響かせておりまして、飛距離は180ヤードほど*2。
YouTubeチャネル:chardunlapには、幼き頃のショットやパッティングの動画があります*3。傾斜を利用しバックスピンをかけてピンに寄せたり、複雑なラインの長いパットを決めたり、バンカーからベタピンしたりと。それも結果として凄いのですが、身体の滑らかさが半端じゃない気がするのは私だけでしょうか。特に9歳の時のスイング。具体的には、トップからインパクトまでのあいだ。早さとか形が美しいとかではなく。親やコーチが型にハメて見た目を美しくした感じが全くしない。全米ジュニアと全米アマに優勝し、大学生でPGAツアーの試合で勝利したという事実を踏まえて見ているので、先入観ありありですけども。ただ、こうした身のこなしに触れると、非論理的ではありますが、以下のようなフワッとした感想が浮かんできます。
小さい頃にある分野で秀でた子、そのすべてが大人になってもその分野で秀でているわけではない。でも大人になって突出している人の多くは幼き頃もその分野、その周辺において秀でていた。分野によっては当てはまらないこともある(そもそも幼少期にその分野がないことも)。でも、逆は極めて稀。分野によっては例外なし。幼き頃の「秀でた」指標は、成績、結果ではない。ゴルフでいうと、身体が出来上がっていないが故にスコアに反映されない部分や特性、そこがずば抜けている。もちろん本質的な意味での豊かな才能と目先の良い結果が結びついている天才もいる。幼き頃にそもそもその分野に身を置いていませんけどわたし、というようなジャンボ尾崎プロのように極めて稀なケースもある。でもそれは例外中の例外。
例外こそ凄みがあるなぁ、なんて、こんなことを考えながら、YouTubeチャネル:chardunlapにアップされている動画を古いものから順番に見ていると、最初の方から驚きの動画が。アメフトに取り組まれているNick Dunlapさんのお姿。小学生の頃はゴルフよりもアメフトを中心に取り組まれていたのではないかと思うほど。私はアメフトに詳しくありませんが、投げて走って蹴って、すべてにおいてキレッキレです。このYouTubeチャネルには12歳の時にNFL Punt Pass & Kickの全国大会に出場されていた動画もあります。これを見ているとバレエ、ライフセービングに加えて息子にアメフトも、なんて考えてしまいます。当たり負けしないフィジカルが要求されるアメフトやラグビーは、身体のありとあらゆるところを鍛え上げ、人を育てるような気がします。U6の世界ジュニア@サンディエゴでもアメフトに取り組んでいるお子様がいらっしゃいまして、その立ち振る舞いと身体能力が半端じゃなかったものですから、これも後押しして。
PGAツアー、ザ・アメリカンエキスプレス、最終ホール。Nick Dunlapさんのウィングパットの直前。
「あなたのお母さんでもこのパットを決められる」
キャディのHunter Hamrickさん(プロ)が投げかけた言葉だそうです*4。YouTubeチャネル:chardunlapの動画には、お母様と思われる女性の声が度々入っています。息子に対する声援や褒め言葉。この声を聞いてから先ほどの投げかけた言葉に改めて触れると、Hunter Hamrickさん(プロ)とお母様がなんとなく重なります。と同時に、息子さんが歴史に残る偉業を達成したのにもかかわらず、お母様に見出してしまいます、避けられない寂しさを。
*1 Sean Fairholm, “Nick Dunlap arrives as ‘It’ kid at U.S. Amateur,” Global Golf Post, 2023.8.13. 記事には“U.S. Kids event”とありますのでUSKIDSのローカルツアーのことかと思います。USKIDSではワールドチャンピオンにはなられておりません。ただ、10歳で参加された2013年のJekyll Island Cup(Regional Champions, U.S. Kids Golf)、2015年のWorld Championship Team Challenge(Boys 11-12, U.S. Kids Golf)で優勝されています。
*2 “Golf Instructor says swing is Flawless! Nick Dunlap 1st Hole 180 Tee to Green,” YouTube; chardunlap, 2011.12.6. 次にこちらのスイング、9歳。“9 Year Old Nick Dunlap has the starter saying "Holy BatMobile!,” YouTube; chardunlap, 2015.1.25. これだけのスイングをしていると(ひつこいですがもちろん私には先入観があります)、たとえ結果としてスコアがでていなくても、親御さんたちやコーチはさぞかし将来を期待していたことでしょう。
*3 YouTube; chardunlap. 他の動画に映されているアプローチについても、型にハメずに感性豊かな感じがします。幼少期に見た目の美しさを追求してもダメだな、と感じます。あとあと伸び悩む気がします。根拠はありません。
*4 Twitter X:@PGATOUR, 2024.1.22. キャディのHunter Hamrickさん(プロ)は、アマチュアで実績を残し、2012年の2012 U.S. Openで46位になっておられる(KHAMBE HUDA IMRAN, “Who Is Nick Dunlap’s Caddie? All You Need to Know About the Amateur’s Trusted Bagman,” EssentiallySports, 2024.1.21)。言葉に重みがありますし、複雑な意味が込められていそうです。